日銀のマイナス金利政策解除がほぼ確実に:経済・生活への影響は大きくない
「金利政策」の正常化から「バランスシート政策」の本格的な正常化に
ETF、J-REITの買い入れ策の正常化の本丸は、買い入れを停止することではなく、それを日本銀行のバランスシートから外していくことである。国債保有残高の削減、つまり量的引き締め(QT)とともに、そうしたバランスシート政策の本格的な正常化には、日本銀行はしばらく手を付けないだろう。 日本銀行は、当面のところは「金利政策」の正常化に注力し、「バランスシート政策」の本格的な正常化に着手するのは、2025年後半以降と見ておきたい。 そこで次の焦点は、日本銀行が政策金利の追加引き上げにいつ踏み切るかであるが、その時期は来年前半までずれ込むと見ておきたい。今年後半に見込まれる米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ、インフレ率の低下、内外景気の軟化などが、追加利上げの障害となるだろう。当座預金制度の見直しを行ったうえで、来年前半に政策金利を+0.1%から+0.3%まで引き上げると見ておきたい。 そこが当面のピーク、つまりターミナルレート(金利の到着点)と考えるが、仮にさらに追加利上げがあるとしても+0.5%までだろう。
正常化は経済・生活への影響は大きくない
日本銀行が金融政策の正常を進めても、金利の上昇幅は小さい。10年金利も、現状の+0.7%~+0.8%程度は、中期的な均衡水準に比較的近いだろう。 さらに日本経済は、金利感応度を大きく低下させてしまったと考えられることから、日本銀行の正常化は、日本経済や国民生活を大きく変えるものではないと考えられる。 しかし、それは円高を生じさせるなど、金融市場には想定以上に大きな影響を与える可能性があり、それを通じて経済にも相応に影響を与える可能性がある点には留意しておきたい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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