携帯電話の契約に「マイナカード」必須? カード利用でパスポート申請や医療費に差も
■ICチップ読み込み“義務付け” 背景に特殊詐欺 高額被害も
政府が携帯契約にマイナンバーカードなどのICチップの読み込みを“義務付け”とする背景です。 特殊詐欺に利用された携帯電話回線です。 契約時の本人確認書類が把握されているものは、619回線でしたが、そのうち、偽造された本人確認書類で契約されていたのが419回線です。 約7割が、偽造された本人確認書類で契約されていました。 偽造された本人確認書類による被害です。 大阪・八尾市の松田憲幸市議です。 4月末、スマートフォンの電波が突然途切れたため、地元の携帯電話ショップに相談しました。 すると、店員から、 「本日15時に名古屋の店舗で機種変更されています」と言われました。 そこで、名古屋の店舗に確認したところ、何者かが松田市議に成りすまして、マイナンバーカードを提示し、店舗側は目視で本人確認を行っていたことが分かりました。 これにより、ネットショッピングなどで、総額約242万円の被害を受けました。 河野デジタル大臣です。 「本人確認には、本人確認書類を目視で確認するのではなく、マイナンバーカードまたは運転免許証のICチップ読み取りが、一番確実な方法だと言える」 マイナンバーカードのICチップのセキュリティ対策です。 主に2つあります。 1つ目が、ICチップを読み取るには、暗証番号の入力が必要です。 暗証番号を一定回数間違えるとロックされます。 2つ目が、不正にICチップから情報を読みだそうとすると、ICチップが自動で壊れます。 中央大学の宮下紘教授です。 「マイナンバーカードは、もっとも強力な本人確認証。ICチップを偽造した例は聞いたことがない。一方で、 ICチップ付きのカードを持っていない人への『配慮・対策をどうするか』が重要。カードの有無で携帯契約などに差があってはならない」
■マイナカードで割引も…普及進める政府の狙いは?
政府のマイナンバーカードの普及策です。 保険証とマイナンバーカードをひも付けた、マイナ保険証です。 厚労省は、マイナ保険証の利用者数を増やした医療機関や薬局に一時金を支給していますが、6月21日、それを倍増して、期間も延長することを決めました。 当初は、 ●期間が5~7月 ●金額は、病院が最大で20万円、クリニックや薬局は最大10万円でした。 これが、 ●期間は1カ月延長して、8月末まで。 ●金額は、病院が最大で40万円、クリニックや薬局は最大20万円になります。 背景には、利用率の伸び悩みがあります。 従来の保険証は、2024年12月2日で廃止されます。 マイナ保険証の利用率は、5月の時点で、7.73%です。 政府が利用促進を急ぐあまり、窓口で現行保険証を受け付けないなど、『強制』ともとれる対応が問題になっています。 政府は、マイナンバーカードの普及率によって、自治体に差をつけています。 総務省は、2023年度と2024年度の地方交付税に、500億円のマイナンバーカード利活用特別分を加え、マイナンバーカード交付率の高い自治体ほど、交付税額を積み増すことを決めました。 マイナンバーカードが普及している自治体を優遇するかたちです。 岡山県の備前市です。 「政府のマイナンバーカード利活用のお金をあてにしたわけではない」 ということですが、2023年2月、世帯全員がマイナンバーカードを取得することを条件に、 ●保育園・こども園の保育料 ●小・中学校の給食費などの、無償化を決定しました。 これに、市民団体などから5万人を超える反対の署名が集まり、備前市は、 2023年4月、“国の地方創生臨時交付金で財源が確保できた”として、マイナンバーカードの取得が条件という方針を撤回しました。 中央大学の宮下教授です。 「保育料・給食費は、デジタル化と全く無関係。デジタル化に関係のない政策に、カード普及を結びつけるべきではない。国や自治体がカードの有無で不当な差別をすれば、憲法の平等原則にも反する」 としています。 パスポートの申請です。 2025年3月から、全国でマイナンバーカードを使ったオンライン申請の受け付けが始まります。 現在の10年有効パスポートの発行手数料は、1万6000円です。 これが、マイナンバーカードで申請すると、100円引きの1万5900円。 書面での申請(窓口での申請)だと、300円プラスの1万6300円 になります。 料金の差の理由は、 「申請時の業務にかかる人件費や経費を踏まえた」ということです。 医療費です。 窓口負担が3割の人の場合です。 それぞれの負担額ですが、 初診料は、マイナ保険証だと3円ですが、現行の保険証だと9円です。 再診料は、マイナ保険証だと3円ですが、現行の保険証だと6円です。 薬局での調剤は、マイナ保険証だと3円ですが、現行の保険証だと9円 です。 政府はなぜここまでマイナンバーカード普及を熱心に行うのでしょうか? デジタル庁の担当者は、 「マイナンバーカードは、対面に加え、オンラインでも確実な本人確認ができる。安全安心なデジタル社会の『パスポート』」 「カード普及により、対面でもオンラインでも、いつでも本人確認できる。インフラが整いつつあるため、官民のサービスにおいて、利活用を広めていく」 と話しています。 宮下教授です。 「マイナンバーカードが、利用者に使い勝手の良いものとなっていない。カードがない人に不便を強いるのではなく、カードがある人に利便性を見せていくことが大切。安心で便利なカードなら自然と利用する」