【いわきの生活交通】バス廃止への対策急務(1月24日)
新常磐交通が路線バスの一部を今春廃止する計画を受け、いわき市は公共交通を維持するための緊急対策を打ち出した。バスや鉄道を利用した通勤を市民に促す取り組みが柱の一つだが、実効性を生み出すには一定の期間を要する。廃止される沿線住民の利用目的を分析した上で、スクールバスの運行やボランティア輸送など地域の実情に応じた域内交通を構築し、影響を最小限に抑える必要がある。 新常磐交通は、運転手不足と新型コロナ禍による経営不振を理由に4月のダイヤ改正で市内の15路線64系統を廃止する。運行便数は市街地を含め平日の693便のうち70便、土日祝日は342便の3分の1に当たる117便が減便される。1日当たり約3千人に影響が及ぶと試算されている。 公共交通事業者の経営安定化につなげようと、市は国土交通省のエコ通勤優良事業所の認証を率先して目指すとともに、企業への普及にも取り組むとしている。とはいえ、市職員の8割程度が車で通勤している現状からの移行は容易ではないだろう。運行時間や利用者数によっては勤務時間を弾力的に設定するなどの対策が不可欠だ。
公共交通の利用促進と同時に、廃止に伴う影響を考慮した支援策も求めたい。市南西部の中山間地では、上遠野、入遠野両地区を結ぶ2路線が廃止になる。入遠野小・中は児童数の減少などで今春、上遠野小・中に統廃合される。入遠野地区の児童生徒計約85人の通学の足としてスクールバスを導入すべきだ。 三和、田人地区では、商業施設や近隣の医療機関などへの住民のボランティア輸送が繰り広げられ、中山間地を支える域内交通として根付いている。西部の川前地区では、NPO法人が有償で高齢者らの移動を手助けするサービスを計画し、北部の久之浜・大久・四倉地区では定額タクシーが動き出している。 市街地に近く、多くの児童が使う路線も対象になっている。少子化や人口減が今後も進むとみられる中、地域の交通基盤を維持していくには公共交通と域内交通の効率的、効果的な組み合わせと機能の充実が欠かせない。行政と事業者、地域住民が一体となって持続可能な仕組みを練り上げてほしい。(円谷真路)