「10倍長持ちする女性向けタイツ」を製造するカナダの起業家
タイツ以外のサステナブルなアパレル事業にも進出を開始
ホーマスは、中国での委託生産を試みて挫折した後に、トロントで小さなラボを開設し、超高分子量ポリエチレンを扱う方法を模索するために3台の編み機を稼働させた。SRTXのタイツは、従来のナイロン繊維を用いた製品と同様に生分解性を持たないものではあるが、長期間の使用に耐える点をアピールしている。「サステナブルな製品として売り出すためには、まず耐久性が重要なのです」と彼女は語る。 ホーマスは、2018年の冬に起業家プログラムのYコンビネータに参加し、モントリオールで自社工場を立ち上げた。その当時、このタイツの生産コストは1足あたり50ドルだったが、彼女は、素材を繊維糸に加工して編むプロセスを内製化することでコストを削減し、昨年は、1足あたりの生産コストを12ドルまで引き下げたという。「2年後には、2.50ドルにまで下がる見通しです」とホーマスは語る。 SRTXのタイツは、H&Mの店舗では黒のベーシックな製品が19.99ドルで販売されており、公式サイトから直接購入できる新製品のマイクロフィッシュネットタイツの価格は、99ドルとなっている。 2020年に同社に初めて出資したH&M は、その2年後に姉妹ブランドのCOSの店舗でSheertexタイツの販売を開始し、2023年にはH&Mの旗艦店での販売を開始した。SRTXは、タイツの生産量を2027年までに現状の約15倍にあたる年間3000万足に伸ばす計画だ。 ホーマスはここ最近、より複雑な生産プロセスを必要とするフィッシュネットタイツと呼ばれる製品ラインを立ち上げたほか、店頭では入手できない製品を提供する直接販売ブランドのSheertex Studioを立ち上げた。同社はまた、外部企業向けのプライベートブランド事業も展開しており、靴ブランドのスティーブ・マデンは先日から、カナダ国内の店舗でSteve Madden X Sheertexと呼ばれるタイツの販売を開始した。 SRTXはさらに、薄手のタイツ以外のサステナブルなアパレル事業にも進出を開始し、その第一弾としてWatertexと呼ばれるPFASなどの有害物質を含まない撥水素材を開発中だ。 直近では特に欧州諸国がPFASの規制を強化しており、米国でもカリフォルニア州などが厳格な規制を検討していることから、この市場は巨大な成長が見込まれている。調査企業Grand View Researchによると、防水通気性テキスタイルの市場規模は現在約20億ドル(約3140億円)で、年間5.9%の成長が予想されている。SRTXはまた、スパンデックスに代わるElastaと呼ばれるリサイクル可能な素材の研究も行っている。 「私たちは、テクノロジーを重視するスタンスでアパレル業界のビジネスを劇的に変えようとしています」とホーマスは語った。
Amy Feldman