“普通の子”がお年寄りを躊躇なく殴る「刹那の狂気」 闇バイト「現場に行ったら無我夢中」少年らを突き動かすもの
気づいたら重大犯罪の「加害者」に
現代社会では、SNSの普及により犯罪誘発の機会が無数に存在する。「お金が欲しい」→「掲示板、X(旧Twitter)を検索」→「闇バイト募集広告を見る」→「応募」→「犯行」という偶然の機会選択から、重大な犯罪に従事する意図を持たない青少年でも、気づいたら重大犯罪の加害者になってしまう。これが闇バイトの怖さである。 このことは、冒頭“ルフィ事件”の実行犯だった青年(犯行当時21歳)の証言が生々しい。以下、RCC中国放送の2024年2月10日の記事を参考にする。 起訴状によると、「ほかの数人と共謀して広島市西区にある時計等買取専門店の店舗兼住宅に押し入り、住人男性を殴るなど親子3人にけがをさせ、現金や腕時計などあわせて約2700万円相当を奪ったとされた」事件である。 青年は、最初から闇バイトを選択したわけではない。借金苦から追い詰められて闇バイトという機会を選択しなくてはならないと思い込むようになっている。 「借金を返すまでに日付がなかったことや、周りに囲い込まれ、どんどん “闇バイト” の方に行ってしまったのだと思います」 「帰り道に臓器を売ったりすることや、初めて “闇バイト” を検索しました。“闇バイト” だったら借金を返せるんじゃないかと思って、どういう仕事か調べることにしました」 機会を選択した青年は、「犯罪にならないのならやりたい」と回答。しかし、従事した闇バイトは強盗であった。 「今までそんなこと(人を殴ったり蹴ったりすること)をしたことは一度もないし、普通に考えてできないと思っていました。考えがまとまりませんでした。逃げたいけれど、人のことも殴れないし、どうしようと。どうしようと思っていたら現場に着いてしまいました」
闇バイトを選択した青年の末路
この「人を殴れないと思った」と語った青年につき、検察側は、「被害者に暴行を加え積極的に行動した」と、論告求刑時に述べている。 筆者が話を聞いた前出の少年の談、「現場に行ったら無我夢中ですよ」という主張と重なる。 SNS上で犯罪誘発の機会に誘引され、犯罪を「選択」した青年の末路は悲惨である。 裁判では「暴行を加えて被害者を制圧する強盗の計画を分かっていたのに報酬のために実行に加わったことは強く非難されるべき」などとし、懲役14年の判決が言い渡されており、安易な「選択」の代償はあまりに大きい。 筆者が知る限り、「闇バイト」に手を出して、捕まらなかった者はいない。