FIFA汚職スキャンダルは日本にどんな影響を及ぼすのか
翻って日本は2019年にラグビーのW杯、2020年には東京五輪を開催し、さらには2023年にはサッカーの女子W杯を招致する構想がある。そうした状況を受けて、JFAの大仁邦彌会長は日本での代替開催について「国内事情も考えないといけない」と慎重な姿勢に終始している。 1998年にFIFA会長に就任したブラッター氏は、ジョアン・アベランジェ前会長から引き継いだ親日派派閥のもとで、JFAと良好な関係を築いてきた。小倉名誉会長も「僕らはいい関係で仕事をしてきた」と理事として活躍した9年間を振り返る。 2005年に復活したFIFAクラブW杯を日本に招致できたのは、その一環といっていい。今年と来年の日本開催はすでに決定しているが、2017年以降は新会長のもとで刷新される新体制の決定に委ねられる。 W杯におけるアジア枠に目を向ければ、2018年のロシア大会は現状維持の「4.5」となることが5月下旬のFIFA理事会で決定している。昨夏のブラジル大会で1勝もあげられず、日本を含めた4カ国すべてがグループリーグで姿を消していたアジアに対しては強烈な逆風が吹いていた。 アジアサッカー連盟(AFC)選出のFIFA理事に初当選したJFAの田嶋幸三副会長が、最初の仕事として「アジア枠の死守」を掲げていたほどだ。結果として現状維持となった背景は、サッカー不毛の地とされたアジアやアフリカを支援し続け、権力を増幅させてきたブラッター会長の大きな後ろ盾を抜きには語れないだろう。 すでに決定した事項が覆ることはまず考えられない。それでも、あまりに影響力が大きかったブラッター会長に対する反動として、腐敗体質を一掃するとの名目で前体制下における取り決めに見直しのメスが入る事態も決して否定できない。 すでに新会長には複数の人物が立候補を示唆している。先のFIFA会長選でブラッター氏に敗れたヨルダンのアリ王子が「準備はできている」と表明すれば、元ブラジル代表で日本代表監督も務めたジーコ氏も出馬を表明、前FIFA副会長の鄭夢準氏(韓国)も可能性を否定していない。 ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)のミシェル・プラティニ会長、FIFA会長戦に出馬しながら直前で立候補を取り下げたルイス・フィーゴ氏の名前も取りざたされるなかで、小倉名誉会長は日本協会が立ち位置を明確にすることが重要だと力を込める。 「日本サッカー界にとっては、次のFIFAがどのような内閣になるかが一番の問題。これからどのような人が立候補するのか、UEFAがどのような対応を取るのかはわからないけれども、田嶋副会長が理事としてFIFAの中に入っていることが何よりもメリットになりますよね。どのような状況になりそうなのかをよく見てもらって、日本協会として誰を次期会長として推薦し、あるいは支持するのかということを上手く決められるかどうかによって(状況は)変わってくると思う」 先のFIFA会長選では、投票直前になってオーストラリア協会がアリ王子支持を表明するなど、アジアは一枚岩になれなかった。そうした反省に立ち、田嶋理事は7月に開催されるAFC理事会でFIFA次期会長に関するアジアの意見を集約する方針を示している。 (文責・藤江直人/スポーツライター)