「複雑怪奇」の防災気象情報、同じ「特別警報」でも警戒レベルが違う?わかりにくさ解消へ抜本整理でどう変わる
■ 「複雑怪奇」の情報をどう整理する? 水害に関係する情報には、気象の状況と危険度を広い範囲で伝える「防災気象情報」(気象庁)のほか、住民に避難を促す行動指南型の「避難情報」(市町村)、河川の水位などを伝える「川の防災情報」(国土交通省)といった情報があります。 ただし、情報を受け取る住民からすれば、どの機関の出したどの情報を重視すべきか、危険の迫るなかで瞬時に判断することは簡単ではありません。 そこで2019年から避難に関する情報(市町村)と防災気象情報(気象庁)などを5段階の「警戒レベル」を用いて伝えるスタイルが始まりました。警戒レベルを数値で示す方法は火山情報で用いられてきましたが、このときから「情報が多すぎて混乱する」「いつ逃げ出せばいいのかわからない」といった住民の声を受け止め、直感的にわかりやすく伝えることに重きを置いたのです。 さらに2021年には災害対策基本法が改正され、市町村などが出す「避難勧告」と「避難指示(緊急)」は廃止され、「避難指示」に1本化されました。 こうした経緯を経て策定されたのが、現行の防災気象情報と避難に関する情報です。気象庁の資料によると、体系図は次のページの通りです。
■ 用語の統一性など課題に 図の中の「気象庁等の情報」のうち、「大雨特別警報」とそれに縦列でつながる「土砂災害警戒警報」「大雨警報・洪水警報」などは気象庁が発するもので、テレビの速報などでよく耳にします。 「キキクル」は危険度を地図上で色ごとに示す情報で、インターネット上で確認できる情報。「氾濫発生情報」につながる縦列の「氾濫危険情報」などは、気象庁と国土交通省が共同して出すケースがあります。 ただ、改良を重ねたものの、似たような用語が並んでいたり、用語に統一性がなかったりといった課題が残されました。 例えば、同じ「特別警報」なのに、「大雨特別警報」は警戒レベル5、「高潮特別警報」は警戒レベル4。また、言葉だけで「氾濫危険情報」と「氾濫警戒情報」の差異を判断しようとしても相当の困難も予想されます。災害の只中にいる住民が「大雨特別警報(土砂災害)」「土砂災害警戒情報」「大雨警報(土砂災害)」を瞬時に区別して適切な判断を下すことができるでしょうか。 そうした点を踏まえ、国土交通省の水管理・国土保全局と気象庁は防災気象情報の抜本的な見直しに取り掛かりました。気象や防災の専門家らをメンバーとする検討会が立ち上がったのは、2022年1月。それ以降、サブワーキンググループでの議論も含めて専門家の知恵を集め、2024年6月18日に新たな方向性が打ち出されました。