2年ぶり白星で涙したヤクルト・奥川恭伸を「僕は笑っちゃいましたね」ともにどん底からはい上がった山野太一だからこその事情
◇記者コラム「Free Talking」 ヤクルト・奥川恭伸投手(23)が14日のオリックス戦(京セラ)で2年ぶりの1軍登板を果たした。度重なる負傷を乗り越え、3年ぶりの勝利も手にした。 試合後のヒーローインタビューでは大粒の涙を流して何度も声を詰まらせた。観客席にはもらい泣きするファンの姿もあったが、チームメートの山野太一投手(25)には真逆の表情が浮かんでいた。 「僕は笑っちゃいましたね」。まさかの破顔一笑には苦楽をともにした2人だからこその事情があった。山野は山口・高川学園高から東北福祉大を経て2021年にドラフト2位で入団。新人年から上半身のコンディション不良に苦しんだ。2年目のオフに育成契約。「野球をやりたくない」と自暴自棄になったときに支えになったのが奥川の存在だった。 「山野さんはすごい。大丈夫だから」。奥川自身もけがに泣かされていたが、親身に寄り添ってくれた。寮生活時代は部屋で一緒にいる時間が長く、冷蔵庫にシャンプーを隠されるなど奥川のいたずらに苦笑いしたことも。昨年の7月中旬に支配下登録選手に復帰した山野は「奥川が近くにいて支えになりました」としみじみ語っていた。 先発した同年8月1日の巨人戦(東京ドーム)で復活登板。2年ぶりの1軍マウンドでプロ初勝利をマークしたヒーローインタビューで泣いた。そのときに「『なんで泣いてる』ってめっちゃいじってきた」という奥川が「僕より泣いていた」姿を見て、思わず笑ってしまったのだ。 「気持ちはすごくわかります。勝った瞬間はうれしくて、2年間みたいな(質問の)ときに僕も泣いた。ヤス(奥川)もそのタイミングだった。(リハビリ中に)一緒にキャッチボールをしていて、表情とかで痛いのが伝わってくるんですよ。すごく辛そうだった。遠投でボールが全然届かない。めっちゃコントロールがいいのにショーバンがきたりしていた。僕も痛いけどやらなきゃみたいな感じになった」 仲良しコンビが失意のどん底からはい上がった。紆余(うよ)曲折を経た2人の投手。これからはともに、ずっと笑顔の日々を送ってほしい。(ヤクルト担当・小林良二)
中日スポーツ