廃止の小児夜間急病センター、最後の日に密着 安心守り17年も医師の高齢化や減少で閉所 発熱や嘔吐の子たち、抱き寄せる親 「大切な場所でした」
約17年にわたり、夜間、急病になった諏訪地域の子どもらを診察した長野県諏訪市の諏訪地区小児夜間急病センターが3月31日、当番医師の高齢化や夜間の診察を担う医師の減少、受診者の減少などを理由に閉所した。最終日には5人の子どもを診療し、幕を閉じた。最終日の診察の現場を取材した。(林克樹) 【写真】最後の患者、最後の診察 センターは救急医療を担う総合病院の負担軽減を目的に諏訪広域連合が2007年に開設した。診療は火、木、土日曜日の午後7~9時で、週7日開いた時期も含めこれまでに延べ4万9501人(3月25日時点)を診察。診察は信州大医学部の小児科医や諏訪地域の開業医や勤務医らが当番制で担ってきた。
「本当に安心した」
最終日の診療が始まってまもなく、団体職員金子歩さん(43)=諏訪市豊田=が発熱や嘔吐(おうと)の症状があった三女(2)を連れて来院。診察した諏訪市の高林康樹医師(58)=高林内科呼吸器クリニック=は不安を和らげようと「(壁に貼られた)アンパンマンの絵を見ていてね」と声をかけ、結衣子ちゃんに感染症の検査をした。 金子さんは、長女(8)と次女(5)が発熱した際もセンターで診察してもらえたとし「『連れてきていいですよ』と言われた時には本当に安心した。長い間ありがとうございました」と感謝した。
続々と来る親子
午後8時前には、スリランカ出身の父親が9カ月の子どもを連れて受診。38度の熱が続いており、心配そうに医師の診察を見守った。センターで薬を処方してもらい、安心した様子で子どもを抱き寄せた。 センター最後の患者は発熱や嘔吐があった4歳の女児。診察を終えて安堵の表情を浮かべた母親(47)は「閉所するのは寂しい」。廃止後について「大きな病院に連れて行くのは少し敷居が高く感じそう」と話していた。
最後は医師や看護師らで記念撮影
午後9時過ぎ、センター最終日の診療時間が終わると、最後の当番医となった高林医師は「お疲れさまでした。連帯感あるチームだった」と看護師や事務員をねぎらい、記念撮影した。 約15年前からセンターに勤務する看護師の山田美香さん(57)は、金子さんらから感謝され「親御さんから感謝の言葉を聞くと目の奥が熱くなった。子どもはもちろん親や自分にとっても大切な場所でした」と振り返った。
センター廃止後の相談先
諏訪地区小児夜間急病センター廃止後の子どもの急病時については、諏訪広域連合は夜間の子どもの急病やけがなどの相談に応じる長野県の小児救急電話相談「#8000」の利用を勧める。電話相談では症状に対する助言や地域の医療機関が案内される。