「もう十分だよ」渡邊雄太から“NBA卒業”を告げられた瞬間、涙腺が決壊した…現地記者が絞り出した感謝の言葉「6年もサバイブしたのは勲章」
高校卒業後からアメリカに渡り、ドラフト外から世界最高峰の「NBA」にたどり着いたバスケットボール日本代表・渡邊雄太(29歳)。10年以上にも及ぶ旅に終止符を打ち、2024-25シーズンからBリーグ・千葉ジェッツに活躍の場を移すことになった。渡邊の決断を聞いた記者が涙した理由とは? 【画像】「あれから10年かあ…」渡邊雄太がNBAの道を切り拓いた米大学時代、NBAファン熱狂&感動的なナビの雄叫びを見る!「まるでスラダンと話題になった富永との胸熱ハイタッチシーン」も(90枚超) 瞬間、こみ上げるものを抑えられなかった。 メンフィス・グリズリーズとブルックリン・ネッツの対戦でブルックリンのバークレイズセンターを訪れた3月4日のこと。試合後、グリズリーズのロッカールームで渡邊雄太に「ダイスケさん、ちょっといいですか?」と呼び止められ、そこで今後のことを告げられたのだ。 「実はNBAでのプレーには今シーズンで区切りをつけて、僕は来季、日本でプレーしようと思っているんです」 まったく想像できない言葉ではなかった。 昨季の渡邊はシーズン途中からフェニックス ・サンズのローテーションから外れ、サンズの一員として1月31日、ブルックリンを訪れた際にも「年齢的にも僕はもうNBAでもそんなに長くはやれないんだろうと思っている。一日一日、楽しまないともったいないと思うようになりました」と少々意味深な言葉を残していた。トレード期限前の2月8日に古巣グリズリーズに移籍が決まっても、不安定な起用法に変化はなかった。 そんな背景もあって、ジョージ・ワシントン大時代から渡邊のプレーを見続けた“ユータ・ウォッチャー”の筆者は“終わりの予感”を実は濃厚に感じていた。サンズがワシントン・ウィザーズと対戦した2月4日。ワシントンDCにまで足を延ばして現場取材したのは、渡邊がカレッジでの日々を過ごした街でもう一度、プレーを観ておきたいという気持ちがあったからだ(後に渡邊にそれを伝えると、「NBAでの僕のプレーを観たのはDCが最後ですか!」と少し嬉しそうに表情を崩していた)。 ただ……それでも実際に言葉にして“終わり”を告げられると、やはり冷静ではいられなかった。これまでのことが走馬灯のように頭をよぎり、涙腺が決壊した。 もう20年以上もアメリカでスポーツライターをしてきたが、ロッカールームで堪えきれずに涙を流したのは今回が初めて。そろそろ片付けが始まった部屋の中で、目の前の記者が感情的になったというのに、渡邊は特に驚いてはいなかった。 周囲に悟られないように必死に声を抑える筆者の肩を、「大丈夫ですよ」とでも言うようにぽんぽんと叩いた。このやりとりをおそらくもう何度か繰り返してきたのだろう。解放されたかのようにすっきりした表情だった29歳は、「この話をすると例外なくみんな同じ反応なんです」と言って静かに笑った。 ここではプロの記者にあるまじき姿も見せてしまったが、渡邊の“NBA引退”が悲しくてそうなったわけではない。むしろその逆で、根底にあったのは安堵。やっと絞り出すように渡邊に伝えたのは、「もう十分だよ」という言葉だった。
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