那須川天心のボクシング転向3戦目で内山高志氏が感じた「大きな進化」
「マジで!?」 突然の試合終了に、那須川天心(帝拳)はリング上で驚きの表情を浮かべた。1月23日に行なわれた、キックボクシングからボクシングに転向した天心の3戦目は、3ラウンド終了後、対戦相手のルイス・ロブレス(メキシコ)の棄権によって決着。転向後初のKO(TKO)勝利を思わぬ形で手にした。 【写真】「KOする詐欺はしない」を有言実行した那須川天心 試合は天心が持ち前のスピードで圧倒し、右のジャブや左のボディブローを効果的にヒットさせていたが、進化したポイントはどこなのか。現役時代にKOの山を築いた元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者、〝ノックアウト・ダイナマイト〟内山高志氏に聞いた。 * * * ――今回の天心選手の戦いぶりをどう見ていましたか? 「過去2戦に比べて内容も良かったですし、今回が最も大きな進化が見られた試合だと思います」 ――具体的に進化したポイントはどこですか? 「重心が低くなりましたね。フットワークを減らしてどっしり構えて、一発一発のパンチに力強さを感じました。 特に右のジャブが良く、リズム良くジャブを突いてプレスをかけていた。積極的にジャブを出すことで見合っている時間がなくなり、相手に休む暇を与えませんでした。タイミング、距離感も素晴らしかったです」 ――加えて、左のボディブローも印象的でした。 「うまかったですね。右のジャブを伸ばした後に左のボディ。ロブレスはまったく反応できなかったですし、効いていました。左ボディが入るから、相手は下に意識がいく。そうなると上のパンチも入るようになる。パンチの散らし方も良かったですね」 ――結果は相手の棄権による3ラウンドTKO勝利となりましたが、普通にKOできそうな予感もありましたね。 「あのまま続けていたら4、5ラウンドでKOしていたかもしれません。ロブレスは右足首のケガによる棄権とのことですが、気持ちが折れたように見えました。天心が試合を支配していた上にダメージも与えていましたから」 ――一方で、フットワークをあまり使わなかった影響は? 「今までの天心は打った後に、サイドステップやバックステップで相手のパンチが届かない距離まで外していました。だから追撃する際に、もう一度ステップインする必要があった。それは安全ではありますが、相手にディフェンスする時間を与えることにもなります。 しかし今回は、最短距離で外したり、スウェー(上体を後ろに反らしてパンチをかわす技術)やブロッキングでディフェンスしていました。防御に重きを置いた戦い方から、オフェンス重視へと変わった感じがします。 距離が近くなれば、もちろん被弾リスクは高まりますが、自分のパンチのリターンも早くなります。もともと天心は反応が速くて目もいいので、近い距離でもパンチをもらいません。紙一重でかわして攻撃に転じることができるので、今後も同じような戦い方をしていけば、KO勝利も増えていくと思います」