どうなるNext GIGA【6】4年間の進展に乏しい学習者用デジタル教科書
GIGAスクール構想の当初から、子供たちが各自で使う学習者用デジタル教科書の普及が期待された。小中学校における学習者用デジタル教科書の整備率は、2024年3月の時点でほぼ100%に達している。だが、この数字は実態を表していない。 【グラフ】教員が感じるデジタル教科書の課題 小中学校では国の費用負担で英語は100%、その他の1教科では約半数の児童・生徒にデジタル教科書を提供している(図1)。調査では教科や学年を問わず1種類でも使用すれば「整備済み」になるため、小中学校の整備率は必ず100%になる。 一方、国費負担以外で学習者用デジタル教科書を導入している例はほとんどないため、実際の整備率は図1にある通りと考えてよいだろう。また、高等学校における整備率は11.7%と非常に低い。中学校まで使えたデジタル教科書が、高校に入ると使えなくなるのは問題だろう。 活用率も高いとは言い難い。学習者用デジタル教科書を提供している小中学校の教員が「毎授業で使用している割合」は13%しかない。「半分程度は使用」まで含めても38%にとどまる。その理由は不明だが、教員の課題感と関係がありそうだ(図2)。 学習者用デジタル教科書は、制度的あるいは技術的に未解決の問題も多い(図3)。特に、巨額になる費用負担や教科書検定制度の在り方など、法律と制度に関わる問題の議論が進んでいない。こうした中、文部科学省は「デジタル教科書推進ワーキンググループ(WG)」を設置した。このWGにおいて具体的な制度設計や検定・採択などについて議論する。 初出:2024年10月14日発行「日経パソコン 教育とICT No.30」
文:江口 悦弘=日経パソコン