猛威振るうフィッシング詐欺 SNS上で「ツール」ばら売りか 警察当局は資金洗浄対策強化
インターネットバンキングの不正送金やクレジットカードの不正使用被害が令和5年に過去最多を更新したことが、警察庁や業界団体のまとめで分かった。偽サイトに誘導しIDやパスワードを盗み取るフィッシング詐欺が主な要因とみられ、交流サイト(SNS)上で「詐欺ツール」が売買され、手軽に犯行が可能になっているとの指摘もある。犯人グループは得た犯罪収益を暗号資産に換えて追及を逃れているとみられ、警察当局は対策に乗り出している。 【イラストでみる】「自分は大丈夫」は危険 変化する詐欺の手口 ■止まらぬ被害 「なかなか歯止めがかからない」。ある警察幹部は、被害の急増にこうため息をつく。 警察庁によると、ネットバンキングの不正送金被害は5年中に5578件が確認され、被害額は87・3億円に上った。4年からは件数、被害額ともに5倍前後という急増ぶりだ。 また、日本クレジット協会のまとめでは、カード不正使用の被害額も5年に540・9億円で4年から約1・2倍に増加。カードの偽造による被害は0・6%に過ぎず、フィッシング詐欺などによりカード番号が盗まれたことによるものが93・3%を占めている。 フィッシング詐欺の主な手口は、金融機関やアマゾン、楽天などのショッピングサイト、運送会社をかたってメールやショートメッセージを送り、本物そっくりの偽サイトに誘導した上でIDやパスワードを入力させる、というものだ。 盗まれた個人情報をもとに、ネットバンキングの口座から金が引き出されたり、不正な買い物をされたりするなどの被害が相次いでいる。 ■テレグラムに売買アカウント 「フィッシング詐欺をするには一定の技術が必要だったはずだが、現在は手軽になってきており、それが被害の増加につながっている可能性がある」。情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」の成田直翔氏は、こう話す。 フィッシング詐欺を行うには、IDやパスワードを読み取れる本物そっくりの偽サイトを用意することが不可欠だ。偽メールの送信先となるリストを調達し、送信先をだますためのメールの文面も考える必要がある。 ところが、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」上で、こうした偽サイトや送信先リストが「ばら売り」されているとみられる。実際にテレグラムを見ると、氏名や住所、携帯番号、メールアドレスなどが書かれたリストのサンプルや、偽サイトを販売するとうたう中国語の書き込みなどが複数確認できる。