「シール」のクロスオーバー! シーライオン7へ試乗 BYDでベスト完成度 加減速感にクセはナシ
クセのない加減速感 ソフト過ぎるサス
それでは発進。全般的に運転はしやすく、セレクターでDを選択し、右足へ力を込めれば、大きなボディはスルスルと進み出す。複数のドライブモードと、2段階の回生ブレーキが用意されるが、さほど大きな変化があるわけではない。 車重は2435kgと軽くないが、総合で530psもあるため、本気の加速はかなり鋭い。パワーデリバリーは滑らかで、ブレーキは自然にスピードを落とす。クセのようなものは感じられなかった。 若干、アクセルペダルの反応が鈍く、ブレーキペダルはスポンジー。だが、違和感を覚えるほどではないだろう。 運転支援システムは、完成度が高いとはいえない。制限速度の警告音は正直うるさい。このアラームは、モニター上の警告表示とともに、簡単にオフにできるが。 車線維持支援は介入が強力で、ステアリングが不意に取られ、パンクしたのかと勘違いしそうになった。ドアミラーなどへ目を配ると、ドライバー監視機能が注意してくる。もう少し穏やかでいい。 操縦性は、530psの動力性能を活かしきれない。BYDで共通することだが、サスペンションは非常にソフトで、軽く回せるステアリングホイールの感触はリモート感が強い。カーブでは自信を抱きにくく、直進時の安定性に優れるわけではない。 旋回中にパワーを加えていくと、リアアクスル側が効果的に働き、フロントノーズが食い込んでいく。引き締まった姿勢制御や操縦性なら好ましい挙動ながら、シーライオン7の場合はそうともいえない。
浮遊感ある乗り心地 競争は楽ではない
アシカへ抱くイメージ通り、おおらかなクルージングは不得意ではない。高めの着座位置ながら、シートはしっかり身体を包み込み、静かな車内空間の中で移動できる。高速道路では、風切り音が聞こえてくる程度だ。 乗り心地には浮遊感がありつつ、僅かに入力を処理しきれない硬さが伴う。もう少し洗練度を高めたいところ。試乗車はスタッドレスタイヤを履いていた。サマータイヤへ変えれば、多少は走りの印象が良くなるかもしれない。 英国価格は、シングルモーターで約4万6000ポンド(約897万円)から。今回の試乗車は、5万5000ポンド(約1073万円)前後が見込まれる。2024年末に受注を始め、2025年2月から納車されるという。 気になる部分もあるとはいえ、筆者がこれまで試乗したBYDの中で、最も完成度が高く感じられたシーライオン7。しかし筆者の中でのベストBYDは、サルーンのシールだ。運転体験が好ましいわけではなく、エネルギー効率に優れるわけでもない。 市場の反応は、実際の価格で左右されるだろう。いずれにしても、テスラ・モデルYやプジョーE-5008などとの競争は、決して楽ではないように思う。 ◯:高速走行時の静寂性 快適なシート △:調整不足のサスペンション リモート感が強いステアリング 車内の操作系のレイアウト 優れないエネルギー効率と運転支援システム
BYDシーライオン7 エクセレンス(欧州仕様)のスペック
英国価格:5万5000ポンド(約1073万円/予想) 全長:4830mm 全幅:1925mm 全高:1620mm 最高速度:215km/h 0-100km/h加速:4.5秒 航続距離:502km 電費:4.5km/kWh CO2排出量:- 車両重量:2435kg パワートレイン:誘導モーター(前)+永久磁石同期モーター(後) 駆動用バッテリー:91.3kWh 急速充電能力:230kW 最高出力:530ps(システム総合) 最大トルク:70.2kg-m(システム総合) ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
イリヤ・バプラート(執筆) 中嶋健治(翻訳)