YOASOBIに成田悠輔が迫る「なぜ音楽はこんなにも人の心を摑めるのか?」
データやアルゴリズムを駆使して人間と向き合ってきた成田悠輔は、今は〝非生産的〟といわれる分野にこそ人間の本質的な欲求が表れると考えている。それを検証する旅として始まった本企画、今回は音楽ユニットのYOASOBIをゲストに招いて対談が行われた。今年『アイドル』が米ビルボード・グローバル・チャート〝Global Excl. U.S.〟にて日本の楽曲としては史上初の1位を獲得し、世界中で〝バズり〟を巻き起こしたふたりが見据える、J-POPや音楽の未来とは? 【成田悠輔✖YOASOBI】ほぼノーカット・字幕付きでお届け!YouTube動画はこちら
音楽の在り方が変わっても ライブの価値は変わらない
成田悠輔(以下、成田) 数年でこれだけ人気が爆発すると、精神的におかしくなったりしませんか(笑)? Ayase(以下、A) 僕とikuraは、結成前からそれぞれ音楽をやっていて、いろいろな悔しい経験もしてきているので、忙しい今の状況に感謝しています。『夜に駆ける』をリリースしてすぐコロナ禍になってしまったので、多くの人に楽曲を聴いてもらっている実感を得られないまま、コツコツ頑張っていましたね。 ikura(以下、i) 有観客でライブができるようになって、初めてファンの方々に支えていただいていることを実際に肌で感じることができました。 成田 世の中で、目の前の数万人を熱狂させられる仕事って、ミュージシャンかスポーツ選手か宗教指導者ぐらいですよね。小説家だって数万人が本を持って踊り狂うなんてことは起きないですし、学者にいたっては誰にも興味を持たれません(笑)。なんで音楽はこんなに人の心を摑めるんだと思われますか? A あらゆる芸術の中で、音楽は作品に対するリアクションが速いですよね。 i 新曲をリリースした3分後にはSNSで反応があるし、作品が広がるスピードが速いような気もします。ライブ会場でも目の前でお客さんとコール&レスポンスをするので、感情が揺さぶられる体験だなと思います。 成田 確かに。人類はずっと、飢饉や疫病、戦争に見舞われながら、死と隣り合わせの不条理な世界を生きてきましたよね。そのつらい現実を一瞬だけ忘れて別世界に飛ぶ方法として、大昔から歌ったり踊ったりする祭りがあった。不要不急にも見える音楽やライブが、実は人間に一番根源的な救いを提供しているのかもしれません。スローな救いが宗教、ファストな救いが音楽。 A 個人的に、その瞬間だけでも五感のひとつである聴覚を完全にジャックできるのは凄いことだと思います。ノイズキャンセルのイヤホンで音楽を聴けば、本当に別の世界に行けてしまうので。さらにライブでは視覚も巻き込んで没頭させることができますからね。