零戦の試験飛行、今後は動態保存に向けて資金集めに
旧日本海軍の零式艦上戦闘機(零戦)の試験飛行が先月、鹿児島県鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地で行われた。この零戦の日本への里帰りに取り組んだのは、主オーナーでありニュージーランド在住の実業家である石塚政秀氏。石塚氏は「心から湧き上がるものがあった」と振り、今後は動態保存に向けて資金集めに奔走したいとしている。 [動画]零戦が再び日本の空を舞う 試験飛行にかける実業家の思いとは
「高度を上げていく零戦は本当にうれしそう」
1月27日の午後2時、天候は曇。零戦は鹿屋航空基地から離陸しようとしていた。石塚氏は、「滑走路の東から14気筒の星型エンジンの回転音の出力が上がり始めた時は、心から湧き上がるものがありました。軽々と飛び上がり滑走路から離れて、大空の中に高度を上げていく零戦は、本当にうれしそうでした。その零戦の姿を見ながら、『良かったね!!』と言う思いだけが心の中を駆け巡っていました」と心境を語った。 鹿屋航空基地の上空を飛ぶ零戦。搭乗したのは、米国人パイロットのスキップ・ホルム氏で、今回のために来日した。「スキップは、ロッキードやマクドネル・ダグラスなど、多くの航空機メーカーの機体に搭乗した経験のある、アメリカでは文字通りレジェンドとも言われるパイロットです。彼とは1998年ごろからの付き合いで、零戦に乗ってくれると言ったのが2014年のことでした」。ホルム氏が操縦する零戦は、2回のフライトを無事に終えた。
翌1月28日の正午には鹿屋航空基地を離陸し、約30分のフライトを経て鹿児島空港に移動。石塚氏に協力する企業の格納庫に零戦を駐機した。 鹿児島空港で到着を待ち受けていた石塚氏は「はるか彼方から黒い点のように零戦の姿が見え始めると、無線ラジオは、零戦へ着陸滑走路にアプローチする許可が出たことを伝えてきました。機体は、軽々と鹿児島空港の滑走路に降り立ちましたが、私はカメラに手を掛けていたのに1枚も撮れずに見入っていました」と思い返した。 鹿児島空港に移動した28日は、石塚氏の誕生日だった。ニュージーランドのクライストチャーチに住む長女と長男、シドニー在住の3男、メルボルン在住の次男、末娘、そして別れた妻から、零戦の飛行へのメッセージと誕生日のメッセージが届いた。 18歳の末娘からは「ダディーのことが体が痛くなるほど愛してる!!」と。 「人生は何時もスタートライン、ゴールなんてありません。立ち止まらず歩き続けなければならないのだと思います」。 今後は、零戦の動態永年保存に向けて資金集めに奔走するとしている。 (取材・文 具志堅浩二)