大成功した人を羨む人は全然わかっていない…イーロン・マスク級の「天才」に共通する恐ろしき特徴
大成功した人を妬ましく思うときはどうしたらいいか。コラボレーティブ・ファンド社パートナーのモーガン・ハウセル氏は「ある一つのことに異常なまでに優れた人は、ほかのことが異常なまでに苦手な場合が多い。その人の全てを見て本当にその人になりたいと思うのか、自分に問うてみるといい」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、モーガン・ハウセル(著)、伊藤みさと(訳)『SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。 ■ユニークな考え方は丸ごと受け入れるしかない 人間には、次のような傾向が備わっている。あなたが好むようなユニークな方法で世の中について考える人は、ほぼ間違いなく、あなたが好まないようなユニークな方法でも世の中について考えている。 この点はとても見過ごされやすく、誰を尊敬すべきか、大きな成功をおさめた人たちに何を期待すべきかについて、私たちの判断を鈍らせる原因となっている。 重要なのは、ユニークな考え方は丸ごと受け入れるしかないということだ。なぜなら、彼らが人々から称賛されている部分と、軽蔑されている部分とを切り離すことはできないからだ。 ここで少し、誰からも必要とされながら、誰からも愛想を尽かされた戦闘機パイロットの話をしよう。
■天才・奇才に「一般常識」は通じない ジョン・ボイドは、おそらく史上最高の戦闘機パイロットだった。 ボイドは誰よりも大きな改革をこの分野にもたらした。彼が書いた『航空攻撃研究』は、戦闘機の機動作戦のマニュアルだが、技術者が航空機を製造するときと同じくらい数学が多用されている。 彼の視点はシンプルながら説得力があった。たとえば、空中戦で優位に立つには、飛行機がどれだけ速く高く飛べるかではなく、どれだけ素早く進路を変えて上昇を開始できるかのほうが重要であるという。 このボイドの発見は、パイロットたちの考え方だけでなく、航空機の製造方法までも変えることになった。ボイドは、いわば空飛ぶ学者だった。二十代のときに書かれたこのマニュアルは戦闘機パイロットの公式戦術手引きとなり、いまだに使用されている。 ボイドは、軍事史上最も影響力のある思想家の一人として知られている。しかし、「ニューヨーク・タイムズ」紙は、かつて彼を「事実上、存在を抹殺された人間……空軍においても」と表現した。 というのも、ボイドは頭脳明晰であると同時に、狂気じみていたからだ。 彼は無礼だった。言動が突飛で、反抗的で、短気だった。同僚が驚いてしまうほど上官に向かって怒鳴り散らすこともあれば、一度は暖房のきかない格納庫に火をつけたとして軍法会議にかけられたこともあった。会議中には、よく手のたこを噛みちぎってテーブルの上に吐き捨てていた。 空軍はボイドの洞察力を高く評価し、必要とした。しかし、ボイドという人間には我慢ならなかった。 ボイドの決定的な特徴は、航空機の操縦について、ほかのパイロットとはまったく違う考え方をしていたことだ。彼はまるで、脳の通常とは異なる部分を使って、ほかの人とは違うゲームをしているかのようだった。 それゆえに、当然ながら、彼に一般常識など通じなかった。そのため、上官はある業績報告書で、ボイドの貢献を絶賛しながらも昇進には否定的見解を示した。 ある新聞の批評にはこう書かれている。 「この卓越した若い将校は、独創的な思考の持ち主である」 だが、そのあとにこう続く。 「彼は気性が激しく短気で、厳しく監督されるとうまく対応できない。自分の計画に口を出されることにまったく我慢がならない」 ボイドが戦闘機の機動作戦についての革新的なマニュアルを書いている最中に、二人の大佐が彼の昇進を却下した。 最終的に、ボイドは昇進した。優秀すぎて、昇進させないわけにはいかなかったのだ。 だが、その後も、彼は多くの人を苛立たせ、誰もが彼の扱いに手を焼いた。よい点、悪い点、不愉快な点、ときに法に反する点もあったが、あらゆる点で彼はユニークだった。 ■「成功している人」は恐ろしいほど極端 経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、オークションでアイザック・ニュートンの論文の原本を大量に購入した。 その多くはケンブリッジ大学に何世紀ものあいだしまい込まれていたため、人目に触れたことがなかった。 ニュートンといえば、おそらく史上最も知的な人物だろう。しかし、ケインズが驚いたことに、ニュートンの論文の多くが錬金術や魔術、不老不死の薬を探す試みに捧げられていた。 ケインズは次のように書いている。 少なくとも十万ワードという膨大な量に目を通したはずだ。それらが、まったくもって魔術的で、まったくもって科学的価値に欠けていることはどうにも否定できないし、またニュートンが何年も魔術の研究に没頭していたことを認めないわけにはいかない。 ニュートンは魔術に夢中になっていたにもかかわらず天才だったのか? それとも、信じられないようなものに関心を持っていたからこそ、あれほど成功できたのか? 答えを知ることはできないだろう。だが、クレイジーな天才が、ときに本物のクレイジーに見えるのは、ほぼ避けられない。