捕手の頭にバット直撃事故の多発は誰が悪いのか?
危険な事故が続いた。楽天ーソフトバンク戦(4日)で6回、ソフトバンクのデスパイネの空振りした後のバットが楽天の捕手、嶋基宏の後頭部を直撃。嶋はその場でうずくまり動けないほどの衝撃を受け、首を固定したまま担架での負傷退場となった。病院で精密検査を受け、幸い大事には至らず5日もスタメン出場したが、実は4日には西武ーオリックス戦でも同様の事故が起きていた。 こちらは、3回2死二塁で、メヒアの空振りしたバットがオリックスの捕手、若月健矢の頭部を直撃、若月はそのまま試合出場を続けていたが途中異常を訴え、6回の守備からベンチに下がり、試合後、病院に向かい頭部打撲と診断され、大事をとって5日はベンチを外れて帰阪した。 頭部への事故防止のため、捕手は特製のヘルメットを着用しているが、さすがに至近距離からバットが後頭部を直撃すると危険だ。そのダメージは計りしれず、昨年も8月にヤクルトのバレンティンのバットが、2人の捕手の頭部を直撃して“病院送り”。中日・杉山翔太と広島・石原慶幸の2人で、両者共にその場に倒れ込んで動けなくなるほどの衝撃を受け負傷退場、病院で脳振盪と後頭部打撲と診断され問題になっていた。 いずれも空振りした後のフォロースルーを大きくとったバットが一周回って捕手の後頭部を後ろから直撃しているもの。バットスイングの後なので打撃妨害にはならず、もちろん故意ではないため、守備妨害でもない。ルール上は何も抵触することがない“事故”なのだが、この問題は誰が悪いのか、負傷退場の再発を防ぐにはどうすればいいのか。 第一回のWBCで捕手としてベストナインに選ばれた評論家の里崎智也氏は、「100パーセント、キャッチャーの技術不足です。バッターのバットが当たる位置にいるキャッチャー側に問題があるんです。バッターのフォロースイングが大きいはずのメジャーリーグで、頭部をバットで直撃して負傷するような事故はほとんど聞きませんよね? キャッチャーがバットの当たらない位置に下がって捕球しているからですよ。 それに比べて日本で事故が起きたケースでは、捕手がホームベース寄りに前に出ています。振った後のバットが当たるような大きなフォロースイングをしてくる選手は限られています。そのバッターのときは、当たらない位置まで半歩か一歩下がって捕球すれば解決します」と、一刀両断した。 里崎氏自身は、現役時代に頭にバットが直撃したことは一度もなかったというが、捕手にはできるだけ前に出て捕球しようとする習性があるという。 「キャッチャーは、極端な話をいうとホームベースの上で捕球したいんですよ。ピッチャーからの距離が近くなりますし、落ちる球全盛の野球においてワンバウンドのボールを止める、捕球することも助かります。また盗塁に関しても送球距離が近くなりますから。でも、そういう行為がケガの原因になるならば、後ろに下がって、それらをカバーできるように技術を高めるしか方法はないでしょう」 下がって捕球することで頭部直撃の事故を防げるならば、危険性のある打者を迎えたときのポジションに注意するしかない。ひとつ間違えば、選手生命にかかわるほどのケガを負う危険な問題だけに、コーチ陣も含めて、再発防止の技術向上に向けての努力と注意を怠らないでもらいたい。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)