ウーバーイーツ自転車配達員の配達スタイルは改正道路交通法で大きく変わる?【チャリンコ爆走配達日誌】
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第67回 ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります! * * * 5月24日に一部改正が公布された道路交通法の一部が11月1日から施行され、自転車にふたつの罰則が定められます。ひとつは自転車による酒気帯び運転に対するもの。もうひとつが携帯電話などを持っての走行に関するものです。 この改正により、ウーバーイーツの自転車配達員は運ぶスタイルを大きく変更することになると思われます。 さすがに働く際に飲酒をする方はいないでしょうから、前者の罰則に関しては大きな影響はありません。ですが、依頼の受注、受け取り先の店、配達先の場所確認、注文者とのやり取りなど、すべてをスマホの画面を注視して操作しなければ仕事が成立しないため「何かがあったらスマホの画面を見ずに自転車を完全に停止する」という習慣をつけなければなりません。 「罰則が導入される前から、それをやるのは当たり前だ」と感じる方も多いでしょう。スマホの画面を見て周囲の確認を怠ったことが原因の交通事故が増えたために法律が改正されたのでしょうから、当然です。法律改正による交通安全の向上はいいことです。ただ、ウーバーイーツの配達員用アプリの仕様が、運転中にスマホを注視せざるを得ないものとなっているのです。 配達員用のアプリは、立ち上げて「出発」のボタンを押すと運営側から依頼が舞い込んできます。スマホ画面に表示される依頼内容には受け取り先の店、配達先の場所、受け取ることができる報酬が表示されます。これを見て配達員は30秒ほどで依頼を受けるかどうか決めなければなりません。 この30秒という時間は少なくとも私にとっては短すぎと感じる時間で、自転車を漕いでいる場合、依頼が届いた通知音が聞こえてから自転車を安全な場所に止めるまでに10秒、スマホを立ち上げて依頼画面を見るまでに5秒はかかるので実質15秒、場合によっては10秒以内に依頼を受けるか判断しなければなりません。仕方ないので私は届いた依頼は基本的にすべて受けるようにしています。 以前、「ウーバーイーツの配達料を決める『アルゴリズム』が東京エリアで大幅変更された件」で書いた通り、たまに意味なくとんでもない高額の配達依頼がくるので、配達員なら届いた依頼の画面は確認したいもの。また、高額依頼の中には自転車だと1時間ほどかかる長距離の配達もあるので、依頼内容もしっかり確認したい。となると、中には自転車を完全に停車させずにスマホの画面を確認する人も出てきます。 以前、判断の時間が15秒に短縮された際、組合として運営側に意見を申し入れたことがありました。組合の意見を採用していただいたのか、他の配達員からも不満が多かったのかはわかりませんが、以降、判断時間は伸びました。ただ、現在の30秒では罰金を取られてしまう配達員が増える可能性があるので、再度運営側に意見しようと思います。 11月からの施行とはなりませんでしたが、今回改正された道路交通法で大きく変わったのは、一時停止や信号無視などをした自転車の運転者に青切符が切られるということ。 先ほども書いた通り、自転車の運転マナーの悪さが法改正の原因のひとつだと思うので、制度の変更自体に異論はありません。ただ、自転車を運転する身にとって怖いのは、自動車の一方通行の道での一時停止問題。 一方通行の道の多くは標識の下に「自転車を除く」と記されていて、自転車は逆走することが認められていますが、注意しなければならないのが交差点。一般的な交差点は、一時停止しなければならない場合「止まれ」の標識があります。 ですが、一方通行の道の交差点の場合、おそらく自動車の誤侵入を防ぐ意味合いもあるのでしょう。逆方向に「止まれ」の標識や道路上に「止まれ」の文字が描かれていません。そんな場所でも一時停止しなければ罰金の対象となります。 交差点の向こう側の道路上に「止まれ」の文字が描かれているかで、一時停止の交差点かどうかを判断できますが、夜間に自転車のライトで遠くの路上を見るのは難しいもの。いつから自転車の一時停止などの違反に罰金が課されるかはわかりませんが、私は今のうちから一方通行の道を自転車で走行する際、すべての交差点で一時停止するようにしています。 文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明