猫も金魚も「人」になってる! 奇想天外な着想、画力に圧倒 大阪中之島美術館「歌川国芳展」
奇想天外な着想、卓越した画力で見る者を引きつける浮世絵師、歌川国芳(1797~1861年)。国芳の多様な浮世絵版画や貴重な肉筆画を集めた展覧会「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。前期・後期で作品の約9割が入れ替わり、それぞれ約200点を公開。江戸時代末期に輝いた、国芳アートの魅力を堪能できる大規模展だ。2025年2月24日(月・振休)まで。 【画像】思わずチョキチョキしたくなる?着せ替え人形を思わせる新発見作 国芳は江戸の染物屋に生まれ、10代半ばで初代歌川豊国に入門。30代はじめに描いた「水滸伝」シリーズが評判となった。「美人画」と「役者絵」が主流だった当時の浮世絵界において、国芳の仕事は「武者絵(歴史や伝説などに登場する武将や合戦シーンを描いた絵)」の人気を押し上げ、画家は「武者絵の国芳」として名をはせた。 展示は、国芳の代名詞である武者絵で始まる。横長画面の半分ほどを巨大な骸骨が占める『相馬の古内裏』(1845~46年ごろ)や3匹のイモリと格闘する強者を描いた『本朝水滸伝剛勇八百人一個 岩沼吉六郎信里』(1833~35年ごろ、前期展示)など、いずれもユニークな画想、大胆な構図で、物語の主要シーンをダイナミックに表現。 一方、国芳は美人画と役者絵も数多く手掛けた。国芳の役者絵は単に舞台を写しただけではなく、ステージの迫力、物語性をも鮮やかに伝える。美人画は、丸みを帯びた輪郭に、どこか親しみやすい表情が特徴で、「染物屋出身ならでは」と思わせる、バラエティーに富んだ着物の柄、写実的な布の動きも見どころだ。 描き手の個性が最も発揮されているのは第6章の「戯画―奇想天外なユーモア」であろう。猫やカエル、金魚といった身近な生き物を擬人化し、人間のようなしぐさをするもの、頭部は動物で体が人間になっているものなどが登場する。たくさんの人間が集まり1つの「顔」の絵になった、思わず目を凝らしてしまう作品などもあり、独特のユーモアと愛嬌がたっぷりだ。天保の改革(1842年)によるお触れで、役者や遊女を描くことが制限される中で描かれたものも多く、当時の閉塞感を吹き飛ばすような明るい作風が小気味良い。 さらに、国芳があらゆる作品に描いた「猫」も注目ポイント。現代の着せ替え人形をほうふつとさせる『流行猫の変化』(1841~1842年ごろ)は、見るほどに心躍る新発見作品だ。 展示を担当した清原佐知子学芸員は「国芳はとくに武者絵、戯画の分野で傑作を残したが、どんなジャンルでも一定の成果を上げたオールラウンダーでもあった。いずれのジャンル、セクションでも個性が光っている。その魅力を存分に楽しんでほしい」と話した。
ラジオ関西