【大阪・関西万博】大屋根リング完成間近も“更地”目立つ…会場建設現場のいま 求められる機運醸成
肝心のパビリオン建設 いまださら地も…
リングの内側には、各国のパビリオンに加えて8名のテーマ事業プロデューサーによるパビリオンも建設中だ。シグネチャーパビリオンと呼ばれるこの独特な建築物については工事が進んでいる一方で、各国が独自で建設するタイプのパビリオン、通称「タイプA」の建設はあまり進んでいないようにも見えた。現に関係者は「工事が進んでいるようには見えないパビリオンも中にはある」と口にしている。 また、まだ何も手がつけられていない区画も目立つ。残り300日を切った中で、果たして建設は間に合うのだろうか。参加国が独自に建設する「タイプA」を申請している52ヶ国のうち12ヶ国ではまだ施工事業者すら決まっていない(6月14日時点)。博覧会協会が外観完成の目安としている10月中旬には間に合わない国がでてくることも懸念されている。
「まだ盛り上がりに欠けている」更なる機運醸成の必要性
開幕に向けての工事が急ピッチで進む中、道を挟んで向かい側の広大な敷地にも大きなトラックが頻繁に出入りする。IRの建設予定地だ。現状は液状化対策の工事が行われているというが、これからこちらの工事も本格化していく中で、万博開催中に騒音や、渋滞などの問題が発生することは避けなければならない。しかし、工事の一時中断による完成時期の遅れも避けなければならず調整は難航しそうだ。 そして開幕にむけた機運醸成も大きな課題だ。在阪の民間企業関係者は「大阪はまだ盛り上がりに欠けている。地元で機運を高めることがもっと必要だ」と指摘していて、開催地である大阪で関心度のさらなる向上を図り、全国に波及させていく必要がありそうだ。 「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表す「大屋根リング」。多くの課題も指摘されている一方で、その形状や、大きさはもちろん、取材を通して空間そのものにも魅力が詰まっていると感じた。この巨大な屋根の下に広がる日陰の空間には、海風や木の香りが相まって、涼しく心地よい空気が流れていて、様々なコミュニケーションを育む場としても、多く活用されそうだ。 そのコミュニケーションを通して、人と人のつながりを生み、ひとつにする、そうした役割も込められているのかもしれない。だとすれば、閉幕後は、このリングはこうしたつながりを感じられる場で、かつ「見える」形で利活用することが、万博の理念の継承、レガシーの継承に繋がるのではないだろうか。 より多くの人たちの可能性を広げるためには、夢洲の地に実際に足を運んでみようという気持ちをどれだけ強く持ってもらえるかが重要なポイントになる。現在のチケットの販売枚数は270万3707枚(6月12日時点)。 実施主体となる博覧会協会には、各自治体との連携を強化し、更なる魅力の発信が求められる。国家的プロジェクトの成功を期待したい。 (執筆:フジテレビ経済部 大阪・関西万博担当 秀総一郎)
秀 総一郎