史上初のJリーグ出身プロ雀士、異色転身で“二刀流”に挑戦のワケ “超大物”から激励「歴史を作れ」
Jリーグ初代キャプテン・川淵氏の存在も原動力
田島は半年間にわたる計5回の研修をこなし、2023年4月から本格的にリーグ戦や各団体が主催する大会への参戦が可能となった。現在はA、B、C、Dの4カテゴリーがあるリーグ戦の「D-3」に所属し、サッカー選手としてパーソナルトレーナーとのトレーニングを続けながら、“昇格”を目指している。 「RMUはA、B、C、Dまでリーグがあって、そこで優勝すると賞金が約3万円。大きな大会で優勝すれば賞金も数十万円とかに上がりますけど、今は賞金に手が届くカテゴリーでもない。残念ながら、プロ雀士としての賞金はまだほとんどないのが正直なところで、健康麻雀のお店でのスタッフ(先生)と、自分のサッカースクール(埼玉県を拠点にした『アリエテ・サッカースクール』)での収入がメインです」 田島が出場を目指すMリーグは、最低年俸が推定400万円、エース級は年俸1000~2000万円とも言われる。しかし、プロ雀士が約3000人いるのに対し、最高峰の舞台に立てるのはわずか36人(全9チームで4選手ずつ)。麻雀競技だけで生計を立てられる選手は全体の1割にも満たず、会社員として勤務しながら二足の草鞋を履くなど、生き方は様々だ。 「Mリーグはまだ全然上の世界ですが、プロ雀士なら誰しもが目指す場所です。ただ、ドラフト制で、成績だけで決まるのでもなく、年に2、3人しかMリーガーになれない狭き門です。メンバーの入れ替えがないシーズンもあって、プロサッカー選手になるよりも、もしかしたらMリーガーになるほうが難しいかもしれません。エンタメの要素もあるので、発信力を含めて他の人が持っていない武器がないといけない。自分にとって、それはサッカーだと思っています。プロ野球では近鉄バファローズで活躍した元投手の加藤哲郎さんが(2023年に)プロ雀士になってますが、元Jリーガーでは僕以外にプロ雀士はいませんから」 田島の“二刀流”を後押しする存在もいる。Jリーグ初代チェアマンであり、Mリーグの最高顧問を務める川淵三郎氏だ。2023年にはサッカーと麻雀をつなぐ大先輩との対面が実現し、直接激励を受けたという。 「サッカーのプロと麻雀のプロになった。そんな人は1人しかいない。麻雀で歴史を作れ」 受け取った色紙には、そうメッセージがつづられており、麻雀愛の強い川淵氏の熱意と期待を感じたと田島は語る。 「川淵氏さんからは、『初めて元Jリーガーでプロ雀士になったわけだから、とにかく頑張ってほしい。Mリーガーになるのは時間がかかることかもしれないけど、続けて頑張ってくれ』と。川淵さんにいい報告をしたいと思うし、励みになる。リーグ戦やカップ戦があると、川淵さんに結果を報告しています。今までサッカー界からはプロ雀士がいなかったので、すごく期待してくださっていると感じます」 田島の中では、“他の人にはない武器”であるサッカーでのプランも一歩ずつ進んでいる。 <後編に続く> □田島翔(たじま・しょう)1983年4月7日、北海道出身。サッカー選手として国内ではJリーグのロアッソ熊本、FC琉球、海外はスペイン、クロアチア、アメリカ、ニュージーランド、サンマリノ共和国、韓国、シンガポール、ブラジルと8か国でプレー。2022年7月に史上初となり元Jリーガーのプロ雀士となり、プロ競技麻雀団体RMUに所属。サッカーとの“二刀流”に挑戦中で、麻雀プロリーグ戦・Mリーグ出場を目指して研鑽を積む。
小田智史