サバクトビバッタ大発生か FAO、異例の雨で警戒感
国連食糧農業機関(FAO)から気になる気象情報が届いた。最新予測によると、春から秋にかけて、アフリカ北部や中近東を含む幅広い範囲で、平年を上回る降雨量が見込まれる。 【写真で見る】畑に飛んできたバッタ 恒常的な水不足の地域なので「干天の慈雨」と思いきや、農業にとっての厄介者サバクトビバッタを勢いづかせる恐れもあるというから、ことは複雑だ。 サバクトビバッタの生態に詳しい国際農林水産業研究センターの前野浩太郎研究員によると「このバッタは半砂漠地帯に生息している。異例の大雨が降ると餌となる植物が繁茂し、バッタが発育や繁殖しやすい環境が生まれ大発生につながりかねない」。 2019~20年にかけての大発生は、やはり大雨が砂漠地帯に降ったことが引き金になった。過去のデータを見ると、数年間のサイクルで大発生が繰り返され、研究者らの間で警戒感が高まっている。
前段階で殺虫剤でたたく
農家にしてみれば、突然現れて畑を食い荒らし飛び去るサバクトビバッタの防除は難しい。FAOなどは地道に現地の生育状況を調べ、大量に増殖する前の段階で殺虫剤でたたく作戦を続ける。 しかし、問題は山積している。最近の研究によると、地球温暖化がサバクトビバッタ発生の背中を後押しする。米ニューヨークタイムズ紙は今世紀末までに最大で25%広がり、現在は被害の少ないアフガニスタン、インド、イランなどにも飛び火する可能性があると報じた。繁殖地の一つであるイエメンなどでは、深刻な政情不安が続き、現地調査や防除が難しいなどの事情もある。 愚かな人類の振る舞いで、バッタとの闘いの厳しさは増している。割を食うのはいつも貧しい人たちだ。 (農業ジャーナリスト・山田優)
日本農業新聞