21歳で読み書き障がい「ディスレクシア」と診断されたわたしがライターになるまで
厚生労働省は、「ディスレクシア(DD、発達性読み書き障害) は基本的には読み書きに困難があること」と説明しています。それによって本人が自信をもちにくい、また読み書きを必要としない職を選びやすいといった人格形成や人生の選択にも大きな影響をもっていると言います。さらに、症状は一概に「全く読めない」「全く書けない」のではなく、その状況が環境や本人の特性や体調等によって変わることもあるのだそう。 ここでは、読み書きに困難をもつ障害がありながら、ライターになるという夢を叶えた当事者の声を紹介します。 語り:ロイス・シャーリング
ディスレクシアの“正しい理解”が進まず…
「ディスレクシアのライター・ジャーナリストです」と自己紹介をすると、相手の反応はだいたい2パターンに分かれます。信じられないという含み笑いか、「どうやって? 」と興味津々に聞いてくるか。「コメディの設定として使えそう」と言われたこともあります。 こういった発言は、悪気があるわけではないのですが、ディスレクシアについてよく知らないことが原因で発せられているのだと思います。ディスレクシアは、単純に読み書きができない、スペルができない人を指すと思っている人がほとんどです。しかし、スペルができない人をライターとして雇うことはないでしょう。 実は、ディスレクシアはニューロダイバーシティ(神経多様性)の中では最も一般的で、10人に1人が該当すると言われています。そして、単純にスペルが下手なことではなく、本当はもっと複雑なものなのです。
読み書きの困難は「氷山の一角」
「ディスレクシアの人々は、思考回路が違います。仕事や教育の現場では間違った古い情報からアップデートされておらず、ディスレクシアはどういうものなのかという理解が進んでいません」とディスレクシアのチャリティ団体「メイド・バイ・ディスレクシア」の創設者でCEOのケイト・グリッグスさんは言います。 ディスレクシアの人の脳は、そうでない人の脳と比べると、情報の処理方法から違っており、その違いがスペル、文法や文を読む方法の違いとして現れます。これはディスレクシアの氷山の一角です。 たとえばほかにも、方向感覚(私は常に迷子になる&遅刻魔で、この2つは相互関係にあります)や記憶力(道順を説明してもらってもすぐに忘れてしまいます)、集中力、感情管理(迷子になると泣きたくなります)、計画的な行動なども苦手です。 これらの症状が、ADHDや自閉スペクトラム症などに似ていると気づいた方もいると思います。実際これらのニューロダイバーシティと重なり合う部分要素も多いからだそうです。 英国ディスレクシア協会のヘレン・グッドサルさんは「調査によって数値にかなりの差はあるものの、約30~40%のディスレクシアの人々は、その他のニューロダイバーシティも持ち合わせていると推測されます」と説明。 脳の働き方の違いにより、ディスレクシアの人々はユニークなスキルの組み合わせをもっていることが多いです。問題解決を得意とし、空間認識の能力やクリエイティブでクリティカルな思考に長けていることも。私にとっても大事な要素ですが、コミュニケーションやストーリーテリング、情報の理解などの能力が平均より高いと言われています。 「10人に9人のディスレクシアの人は、スペリングが不得意です。しかし、71%はコミュニケーションに長けていて、ライター、ジャーナリスト、メディアやマーケティングの業界に適しているのです」(グリッグスさん)