「介護の不安」で58年間連れ添った妻を絞殺した87歳夫に懲役8年の実刑判決 法廷で「涙ひとつ見せなかった被告」に裁判長が放った言葉
夫から首を絞められ絶命するまで、妻は足をばたつかせて抵抗していた
そして、京子さんと自分のどちらが先立つとしたら、自分が残った方がいいと考えるようになったと話した。 「私が先か彼女が先かと考えたら、私が先に行ったとしたら長男が妻を介護することになる。どっちが良いか悪いか。私が残った方が(外部の人間と)コミュニケーションが取りやすいと思った」(吉田) 「家内はですね、結婚してからほとんど就職したりしていないから外部との接触が少なく、付き合いが少ない。家内と比べたら私の方が外の付き合いはできる」(同) 事件当日の昨年12月14日午後1時過ぎ、昼食をまだ取っていなかった京子さんに「早く昼御飯を食べろ」と注意したものの「まだ遅くないんだ」と言い返されたことがきっかけで京子さんを押し倒し、首に手をかけたと話した。「介護のことが念頭にありました」と将来に対する不安から殺害に至ったと語った。 「それは当然(足を)バタつかせていました」と犯行の最中、京子さんが抵抗していた様子も淡々と明かした。 いま京子さんに対してどう考えているか、との弁護人からの問いにはこう答えた。 「かわいそうなことをしたと思う。友達が少なかった。ずっと私と一緒になったせいで寂しい人生を送らせてしまった」(吉田) 「全部私の責任なんですが、こうなる前に気がついて話し合いが必要だった。そういう気持ちになったこともあるんですが、してあげられなかった。私が(一家の)責任者の立場ですから、本来なってはいけない人が責任者になったのは私が原因だと思っています」(同)
家の中で家長然と振る舞っていた被告
検察官は反対尋問で、家事分担について細かく追及した。 検察官「食器を洗っていたのは?」 吉田「私はそういうことはしませんので」 検察官「あなたは掃除をしていたのか?」 吉田「私は(自分の)寝室と居間を」 検察官「それ以外は?」 吉田「私が気がつけばやりました」 検察官「洗濯は?」 吉田「京子がやりました」 検察官「あなたの服は?」 吉田「私です」 吉田の物言いからは足を悪くした京子さんを労っていた様子は微塵も感じられなかった。むしろ家の中で家長然と振る舞い、気ままに暮らしていた印象を受けた。 検察官「あなたは一日どのようにして過ごすのですか?」 吉田「パソコンで麻雀ゲームをしたり、散歩をしたり、知り合いの喫茶店に行ったり」 検察官「どの部屋で過ごすのですか?」 吉田「居間です」 検察官「テレビは日中、観ていたのか?」 吉田「興味があるものがあれば」 吉田は「昼間はテレビを独占していた」「妻と一緒にテレビを見ることはほとんどなかった」とも語った。