阪神の藤浪が山本昌氏直伝フォームで死球、抜け球の悪癖封印も迫力不足を露呈…今季復活は果たせるのか?
「外角、内角、緩急をあまり気にせず、ある程度ゾーンに投げられたらと思っていた。特段悪くもなく、よくもなく、ある程度まとまっていたので、その課題(の克服)という面ではよかった。及第点といっていい」 ズラリと並ぶテレビカメラを前に藤浪はそう自己採点した。 「手首が立ってボールをつかまえる(指にボールがかかってコントロールする)ことができてよかった」と続けた。 昨年10月の紅白登板以来となる実戦で自らに掲げたテーマはクリアした。 「(山本)昌さんに教えてもらったことに関して、これができなかったというものはなかった」 腕を体から離さず、手首を縦に使い、”ライン”を外さない。山本昌臨時コーチの教えを忠実に守り、死球、暴投、抜け球という悪癖の封印に成功したのである。特に右打者方向への抜け球、その反対方向へ引っ掛ける球がなかったことは大きな改善点だった。 矢野監督も「何をどうしたいのか、が見えた」と評価。福原投手コーチも「結果よりも、やりたかったことができたかどうかが大事」と、「ぶれないフォームでの制球難克服」という点に成功した藤浪の実戦初戦に合格印を押した。 ポジティブに見れば復活への第一段階は成功したと言っていいだろう。 だが、藤浪が最終的に求めるもの、或いはチームに求められるものが、ローテーに入り5年ぶりに2桁勝利投手に復帰することであるのならば不安要素は残った。
ストレートは、この時期に150キロ台をバンバン出しながらも、空振りはなく、ファウルは、たったの1球。高山に芯で仕留められ、木浪にもストレートを捉えられた。坂本には、ストレート待ちの変化球狙いのタイミングで見事に反応された。 確かにボールは暴れなくなったが、一方、藤浪の持ち味であったはずの迫力、球威に欠けたのである。ネット裏、ヤクルトの山口重幸スコアラーも「打者のスイングを見る限り、藤浪の腕の使い方がコンパクトになったことで、ボールが見やすくなっているのかもしれない」と指摘した。 しかし、藤浪は、なぜ迫力がなかったのか、という原因についても理解していた。 「及第点と言ったが、まだまだと思う。フォームに間がなく、高山さんに弾き返されたところは修正したいし、今日は、球速、球威は課題にしていなかったが、もっとファウルを取り、もう少し(バッターにボールを)差し込みたかった。変化球にも抜け球があった。次回以降は、緩急、外内の投げ分けとか、投球をしたい」 球威で押し込むことができず、簡単にジャストミートされたのは、フォーム固めと制球難克服に主眼を置き、打者のタイミングを崩すフォームの駆け引き、間や、緩急をつけなかったため。つまり、今日は自分本意に打者に投げただけで、あえて投球と呼べるような勝負はしなかったというわけである。 藤浪は、「球速、球威(の課題克服)は、いつでもできる」とまで断言した。 藤浪は、8日(中日戦)、9日(日ハム戦)のいずれかの練習試合に登板予定。ここでは制球難克服の次の第2段階に進む考え。藤浪自身の復活計画に狂いはない。 「ここ数年、活躍できていないので活躍したい。いいオフを過ごせた分、それを、しっかり出せるようにしたい」 藤浪は自分に言い聞かせるように2020年の復活を宣言した。 開幕カードを戦う前出のヤクルト”007”が言う。 「藤浪がローテーに入り16試合から19試合に先発できるようであれば、阪神は非常に怖いチームになってきますよ」 西、青柳、高橋遥の先発第1グループ候補に続く、ガルシア、岩貞、秋山、望月、才木、小野、ガンケルらの先発第2グループ候補と藤浪は先発の座を争っていくことになる。