「ほんまは同じバレーをやってほしくなかった」高橋藍の母が明かす“反抗期ナシ”の少年時代…「藍は生まれた時からライバル(兄)がいましたから」
一流アスリートの親はどう“天才”を育てたのか――NumberWeb特集『アスリート親子論』では、さまざまな競技で活躍するアスリートの原点に迫った記事を配信中。本稿では、バレーボール日本代表・高橋藍(22歳)の母・小百合さんのインタビューをお届けします。涙ながらに語った、知られざる苦労とは? 〈全2回の前編〉 【秘蔵写真】こんな高橋藍、見たことある?「バレー始める前の貴重な兄弟写真」「ラン少年があのスター選手と写真を…」「みんな見てるのにバボちゃんとイチャつく藍さん」など“高橋藍のすべて”を写真で見る(100枚超) 年子の育児は壮絶だった。しかも、2人とも男児だ。 「塁と藍、上は早生まれだから学年は2つ違いですけど、ほぼ間が空いていないんですよ。気づいたら2人授かって、どうやって育てていたのか覚えていない。とにかく大変でした」 高橋藍の母・小百合さんは、息子2人と、藍の3歳下で妹の莉々(りり)さんを含めた三人兄妹の子育てをこう振り返る。 藍は18歳で日本代表に選出され、19歳で東京五輪に出場した。日本体育大学在学中にイタリアに渡って3シーズンプレー。今春、大学を卒業した。兄の塁もバレーボール選手として活躍。今季サントリーサンバーズのⅤリーグで優勝に貢献し、リリーフサーバーとして光るプレーを見せた。 今でこそ、穏やかにあの時間を振り返られる。藍がプレーするイタリアに観光を兼ねて1カ月近く滞在する余裕もできた。 だが、小百合さんが20代の頃は、仕事をこなしながら子育てに奔走する毎日だった。大げさではなく「(当時の)記憶がない」と言うのも当然だった。
「藍には生まれた瞬間からライバルがいた」
「繊細で音に敏感だった塁はとにかく手のかかる子やったんです。夜も寝ないし、寝てもすぐ起きる。朝5時には玄関に立って『遊びに行きたい』って。え、まだ夜やし、と言いながら寝かしつけていました。藍も夜はあまり寝ませんでしたが、二番目だったせいか、(兄よりは)手がかからない子でした」 藍は小さい頃から要領が良く、身体能力も抜群だった。公園でキャッチボールをすれば、幼稚園児が投げる距離を遥かに超えた遠投を見せ、サッカーをやらせれば華麗なドリブルで自ら運んでゴールも決める。前転や鉄棒の逆上がり、と何でも兄より先にできるのが藍だった。 何をやらせても、それなりの選手になるのではないか。決して親バカではなく、そう考えても不思議ではないほど能力の高さは目立っていた。ただ、藍自身が何かを「やりたい」と言い出すことはなかった。 「藍は根っからの面倒くさがりなんです(笑)。新しいことを始めることもめんどくさいし、やってみて、できないところを人に見られるのが嫌。特に藍は生まれた瞬間からライバル(兄)がいましたから。相当な負けず嫌いでした」 勝気な弟は穏やかな兄といつも一緒にいた。ただ、周囲に迷惑をかけることはなかった一方で、兄弟ゲンカは日常茶飯事。仲良く遊んでいたかと思えばすぐにケンカが始まる。些細なことでちょっかいを出しては、身体の大きな兄に制され、最後は泣いて終わる。きっかけをつくるのはいつも藍のほうだった。 「ネコのじゃれ合いです。『そんなにケンカするなら、近寄らんかったらええのに』って(笑)。小さい頃に叱ったとしたら、それぐらい。そもそも藍は切り抜けるのがうまいので、私が叱ろうと思ってもスルスルっといつの間にかかわされるから、何に怒ろうとしていたか忘れてしまうんですよ」 大きな反抗期もなく、小百合さんが言って聞かせたのは「人にやられて嫌なことはしちゃダメ」ということぐらいだったという。
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