中年兄妹+高齢母の〈終の棲家〉に、突然〈お嫁さん〉がやってきた!…居場所を失う妹「出て行きたいけど、出て行けない…」悲惨すぎる状況のワケ
【事例2】共有の家で暮らすが、家族構成の変化で居心地が最悪に
山田さん(40代)は、父親が亡くなったことをきっかけに実家を売却。その後、母親が2分の1、山田さんと兄がそれぞれ4分の1の割合で資金を出し合い、新しい戸建て住宅を購入しました。 「父が亡くなった当時は、兄も私もすでに独身のまま40代になっており、今後も結婚なんてありえないと考えていました。そのため、母親が提案した〈みんなでお金を出して家を買う〉という案に納得したのですが…」 母親が見つけた5,000万円の築浅物件を山田さんも兄も気に入り、母親が2,500万円の現金で、兄と山田さんはそれぞれローンを借りるかたちで購入し、共有名義としました。 ところが数年後、突然兄がおなかの大きい女性を連れてきたことで家族の状況が一変。突然お嫁さんと子どもが家族に加わったことで、山田さんは自分家でありながら、非常に肩身の狭い思いをしています。 「兄嫁からは疎ましがられ、母親からは愚痴のはけ口にされ、兄からは子守要員にされ、毎日気の休まる暇もありません…」 山田さんは出て行きたいと考えていますが、返済中のローンもあり、新居の家賃を考えると、二の足を踏んでしまいます。 「母か兄に自分の持ち分を買ってもらいたいのですが、お金を払ってもらえるかどうか…。もしこのまま家を出ても、自分ひとりが損をすることになりそうで、決心がつきません…」 山田さんは心底疲れ切った表情です。
「家族なのに?」という気持ちが先立ち…親族間売買は難しい
野村さんも山田さんもそれぞれ事情は違いますが、「不動産の共有」という問題は同じです。いくら家族とはいえ、所有者が複数人いれば意思決定は大変です。 野村さんの場合、母親と弟たちの4人で共有していてもメリットがありません。アパートの家賃は入りますが、家賃を受け取っているのは母親で、子どもに分配してくれないからです。 本来なら、所有割合によって家賃も按分すべきですが、ひとりが家賃を独占するという使用貸借は、家族間ではよくあることで、母親が税務署に申告・納税していれば、税務的な問題は生じません。 しかし、数年にわたりそのような状況であることから、野村さんもそろそろ使える財産にしたいと思うに至りました。野村さんは母親と弟に売却の話を持ちかけたものの、母親も弟も「家族なのにお金を払うなんて…」といって取り合わず、売却の話は実現しません。 筆者が野村さんにアドバイスしたのは、野村さんの6分の1の持ち分を、それでも母親か弟に買い取ってもらうことです。時価5,000万円なら、6分の1は833万円となります。 山田さんの場合も、気を遣いながら住み続けるよりは、別の場所に住み替えたほうが精神衛生上望ましいでしょう。こちらも、母親か兄に、自分の持ち分である4分の1を買ってもらうことができれば、問題は解決します。 しかし、親族へお金を払うことに抵抗感がある人が多く、親族間売買は簡単ではないのです。