【シルクロードS回顧】快進撃続く杉山晴紀厩舎 ルガルが魅せた一流の資質とは
レースを支配したルガル
阪急杯よりも間隔をとることができるシルクロードSは、近年GⅠ・高松宮記念のステップレースとして注目度が上昇中だ。さらにルガルが3馬身差圧勝となれば、今年もシルクロードS組で本番も決まるのではないか。ルガルの走りにはそう思わせるだけの価値がある。 【シルクロードステークス2024 推奨馬】パワー型で時計のかかる馬場は大歓迎、黄金コンビで必勝態勢だ! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) まず、レースはスタート直後で決まったといっていい。ルガルは抜群のダッシュ力を見せ、行きたい馬を待つ余裕もあった。ダッシュ力で劣るテイエムスパーダが強引にハナを奪いにくれば、さっと引いた。前半600m33.4は上り区間に入る京都としては速かったが、飛ばしたのはテイエムスパーダだけ。ルガルには余裕があった。後半600mは11.2-11.3-11.8と失速ラップを描いてはいるが、テイエムスパーダを自ら捕まえにいったルガルに番手から34.0の脚を使われては、後続はついてこられない。ハイペースに動じず、テイエムスパーダからラップを引き継いでからも極端に落とさなかった。 序盤の流れが速くても失速しないのは、充実期にある一級スプリンターの証だ。前半も速く、後半も遅くならないからこそ、勝ち時計1:07.7は完成する。番手が伸びきれなければ、1分8秒台決着になり、後続が押し寄せてきただろう。前半から飛ばすスプリント戦では、後半をまとめる力が問われる。速いだけでは一級スプリンターにはなれない。最後まで持続するスピードがあってこそ、その座につける。そういった意味では、ルガルは早くもその資質を証明したことになる。
充実一途の杉山晴紀厩舎
重賞はこれまで2、4、2着と惜敗つづきだったが、前走京阪杯がきっかけになった。古馬のスプリント重賞で前後半600m33.7-33.7とバランスある優れたラップ構成を好位から堂々立ち回った。最後はトウシンマカオに屈したが、このレースの走破タイムは今回と同じ1:07.7。この経験を経て、今回は馬体重+10キロと明らかにパワーアップした。京阪杯よりスタートが速くなれば、前半の負担は減り、後半に脚を温存できる。今回はまさにその通りのレースで圧勝した。斤量が1.5キロ増えたこと、京都の馬場が緩く、時計を要する状態だったことを差し引けば、同タイムでも価値は雲泥の差だ。 スタートで流れをつくり、ひと溜めしてスパートをかける。理想のレースを展開できる支配力の向上は目覚ましい。こうも短期間で変わるものかと感心する。これも昨年から絶好調の杉山晴紀厩舎の仕上げ力だろう。根岸Sをエンペラーワケアが勝ち、東西重賞制覇を達成した。どちらも続くGⅠ最有力であり、勢いは続く。両馬に共通するのは、早期から活躍するのではなく、じっくりと馬のペースに合わせて、才能の花を開かせたことだ。もっといえば、どちらも負けが非常に少ない。ターゲットを明確にし、それを着実に勝利に結びつけていく。一気に進みはしないが、立ち止まりもしない。厩舎の仕上げ力が実を結んだ2頭だ。同世代には4連勝で毎日王冠を制したエルトンバローズもいる。まだまだ快進撃は続くだろう。