有望な経営者が、社員に疎まれ「孤独な人」になっていくのは何故なのか?
利害関係のはざまでなされる決定
事業部門の閉鎖のように、たくさんの人の想いがのったものを廃止せざるをえないこともあります。そこで働く人たちの雇用を維持できない場合には社長にかかる心理的な負担はより増えることでしょう。 本書によれば、会社の経営が傾く原因の中で多くを占めるのが「撤退の遅れ」だと言われています。その事業を維持発展させることは社内の努力だけではどうにもならないケースもあるため、適時適切な撤退判断は重要な経営者の仕事です。 社長は目指す思想やビジョンの実現には徹底的にこだわりながらも、そこに向かうアプローチは柔軟に変えるべきだとされています。抽象度の高い大義は堅持しながら、具体的な施策は適宜柔軟に見直すという意識の切り替えが求められます。 特に特定の事業を立ち上げた人に本気の意志がなくなったら、ほぼ間違いなくその事業は失敗するとも記載されています。事業のビジネスモデルや外部環境も大切ではあるものの、最後は人を見ることが必要とも言えるでしょう。
社長は人の輪の中で生まれ、孤独な人として育つ
複数人数のチームで起業する場合には、その人たちをまとめられる人が社長になります。その魅力がある社長は、本来的にメンバー間で仲の良い組織を運営したいという意思が働きます。社長は人の輪の中で生まれるのです。 ただ、その先に仲間からの裏切りや、仲間の願いや望みを断ち切らざるをえない厳しい意思決定を繰り返し経験していくうちに、どうやら同じ感覚で働く人はいないのだという認識に至ります。それがあらゆる社長を孤独に追い込む構造とも言えるでしょう。 一方で経営者として努力して成果を出したときには、まさにその立場だからこそ人一倍喜びが大きくなります。それが本書の副題である、「社長はつらい、だから楽しい」の私なりの理解です。 太古の昔から人は本能的に孤独に弱い生き物です。そのため、同じような境遇の経営者仲間や、社長の悩みに寄り添ってくれるこのような本は貴重な存在となります。 本書には、ここで触れた領域についてのより詳しい内容に加えて、資金、事業、出口戦略における悩みなどが描かれていて、どれもよく経営者が直面するものか、いかにも起こりそうなものばかりです。 本書を通読すれば、経営者の悩みをより詳しく理解できます。そして、社長や組織をうまく支えるか、自分自身で起業するか、既に起業していれば会社をより円滑に発展させるか、それぞれの活かし方をぜひ考えてみて下さい。
大賀康史(フライヤーCEO)