清原容疑者は更生できるのか?メジャーの社会復帰成功例
では、なぜ、コカインを使用しても、清原容疑者のように逮捕をされることもなく、セカンドチャンスが与えられ、更生の成功例が増えるのかだが、そこにはやはりアメリカ社会と日本社会のコカインなど薬物中毒に対する考え方の差がある。日本ではあくまでも犯罪だが、アメリカでは売る側に回らない限り、薬物に手を染めた人は、中毒”患者”と捉えられる。止めたくても止められないーー。つまり、日本では犯罪者となるが、アメリカでは病人と捉えられるため、リハビリによって更生させることに主眼が置かれる。大リーグの場合でも、ステロイドの使用には厳しい罰則があるが、コカインなどの場合は、更生プログラムが適用され、週3回の薬物検査が課される。 過去、完全なジャンキーとなったエンゼルスのジョシュ・ハミルトンにしても、大リーグ機構は 出場停止処分を下したが、復帰の道を閉ざすことはなかった。1999年6月のドラフトで“いの一番”でレイズから指名されたハミルトンは、2年後にはコカインにはまっていく。翌年から2005年までは、大リーグ機構から受けた出場停止処分も含め、3年間も試合に出場できなかった。その間は無給だったが、2006年にレイズのマイナーで復帰すると、その年のオフにルール5ドラフトでレッズに指名されて移籍。翌年、メジャー初出場を果たし、その初めての試合では彼が打席に入ると、シンシナティの4万2000人のファンが、薬物中毒から抜け出したことに対する賞賛の拍手を送った。ファンらは、後ろ指を差すのではなく、むしろ彼の勇気を称えたのである。 その後、ハミルトンはリーグMVPを獲得するまでになる。実際、そうして薬物中毒から復帰して活躍した選手は少なくない。前出のパーカーは1990年オールスターに選ばれた。同じときに処分を受けたロニー・スミスは、1989年に「カムバック・プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。もちろん、ロッド・スカリーのように薬物中毒から抜け出せず、コカインの過剰摂取による心臓発作で死亡したケースもあるが、大リーグ機構もアメリカの社会も、彼らを見つめる目は、決して批判的でなく、社会復帰を念頭に置いたものだ。