「生地」から覗くモードの舞台裏 最高峰のランウェイを支えるテキスタイルの表現と技術とは?【株式会社BVLAK】
世界は、今年もファッションにとってもっともエキサイティングな時期を乗り越えた。1月のパリ・メンズ。2月のNY、ロンドン、ミラノ。そして3月のパリ・ウィメンズ。2024AWコレクションのことだ。 ファッションウィークは半年先から1年後までの流行を支配する。たとえメゾンブランドを手に取らない人でも、街角やパーティで、映画やMVのワンシーンで、SNSの中で、このランウェイを行き交った服とメイクをさまざまな形で見かけることになる。少なくとも、6月頃にSSコレクションが始まるまでは。 ブランドの世界観と最高峰の品質を支えているのは、デザイナーと職人たち。しかしそれだけではない。彼らに選び抜かれた「素材」を提供している人々がいる。 その一社が「BVLAK(ブラック)」。国内/海外ブランドと「生地」を取引する日本のテキスタイル企業だ。2016年設立、社員数8名のベンチャーながら、そのオフィスの壁は世界のトップメゾンからのオーダーシートで埋めつくされている。本記事では代表の正面雄一郎氏に取材。知られざる「生地企画」の仕事からファッションウィークの裏側を覗いてみよう。
「生地を企画する」とは?
ーBVLAKの業務内容について教えてください。 当社の主業は「テキスタイルデザイン」。カットソーなどのニット生地を中心に企画しています。 売上の約70%はフランス、イタリアのファッションブランドで、日本の丸編ニット工場・染色工場でカットソー素材を製造し輸出します。
ー「生地を企画する」という仕事は馴染みの薄いものです。「製造」とは異なるのですか。 「企画」と「製造」を兼ねている生地メーカーもありますが、私たちは工場を持っていません。生地を求めるブランドと工場の間に立ち、オリジナル生地を開発する役割です。 あらゆる創作物と同じように、生地づくりも最初はインスピレーションから始まります。「こんな生地はまだ世の中に存在しないのではないか」というアイディアを、工場が実際に製造できる設計に落とし込む作業が「企画」にあたります。 ーアイディア段階から仕様を設計するイメージでしょうか。服づくりの現場では、ブランドが直接工場に生地を発注していると思っていましたが。 直接発注するケースも多いですし、商社やエージェント会社が関わる場合もあります。たしかに海外大手のブランドと直接取引しているBVLAKはレアケースだと言えますね。しかしながら、私たちが多く関わっているファッションウィークを含むメゾンブランドのクリエイションは、きわめてハイレベルであり、前例がないものばかりです。「〇〇と××を何%ずつ混紡する」などの具体的な発注はまず来ません。そのため彼らの意図を翻訳するような仕事が必要になるのです。