母に頼まれたので通帳を管理してきたのに、後見人から「通帳の引き渡し」を求められました。私には何の権利もないのでしょうか?
高齢の親に頼まれて、通帳の管理をしている人は多いでしょう。親が認知症を患って成年後見人をつけたら、成年後見人に親の通帳を取り上げられたとなると、不満に感じるのも当然です。 そこで本記事では、成年後見制度の下では預貯金を管理する権限が誰にあるのか、また、成年後見人等の身分を確認する方法、親の預貯金を管理する成年後見人等に不正の疑いがあるときの対処法などを、分かりやすくまとめました。
成年後見人には被後見人の預金を管理する権限がある
成年後見人とは、認知症などで判断能力が低下した人の支援や権利・財産の保護などを目的に、財産管理や法律行為の代理などを行う権限を持つ人です。親族などの申立てを受けて判断力の程度に応じて家庭裁判所が選任する「法定後見人」「補助人」「保佐人」、判断力が低下する前に本人が将来の後見人と権限の範囲を指定して契約を締結する「任意後見人」の4つの類型があります。 4つのうち法定後見人は、預金取引や関連する法律行為に関して、被後見人の法定代理人として手続きを行う権限を持ちます。預貯金は後見人の管理下で保全され、本人の生活を守るために使われるのが原則です。法定後見人に通帳の引き渡しを求められたら、家族は応じなければなりません。 判断能力の低下の程度が比較的低い人につけられる補助人や保佐人、権限の範囲が契約で定められている任意後見人の場合は、預貯金を管理する権限が認められていないケースもあります。通帳を引き渡す前に、定められた権限の範囲を確認する必要があるでしょう。
後見人等を名乗る人の身分や権限の範囲を確認する方法
成年後見人等を名乗って通帳の引き渡しを求めてきた人が、本当に成年後見人等の身分を持っているのか、権限の範囲に預貯金の管理が含まれているのかを確認したい場合は、法務局で「(成年後見人等の)登記事項証明書」を発行しましょう。 「(成年後見人等の)登記事項証明書」とは、成年被後見人等および成年後見人等の氏名や住所、権限の範囲、任意後見契約の内容などが記載された書類です。 成年被後見人本人の配偶者や四親等内の親族であれば、(成年後見人等の)登記事項証明書の発行を請求できます。次のものを用意して、法務局の窓口で手続きしましょう。 《必要なもの(配偶者、親族が請求する場合)》 ・成年被後見人等との親族関係を証明する書面(戸籍謄抄本の原本または続柄の記載がある住民票の原本) ・請求者の本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・手数料(収入印紙):1通につき550円(1通の枚数が50枚を超えた場合は50枚ごとに100円加算)