今、なぜ、平成という時代を振り返る必要があるのか?(後編) 月刊誌『Wedge』創刊35周年特別企画~令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史~
小誌が創刊した1989(平成元)年の約2年前、ある巨大組織が「崩壊」した。 日本国有鉄道(国鉄)のことである。 国鉄崩壊の要因はさまざまだが、一つには、全国一体運営の公共企業体であり、運賃や賃金、設備投資などはすべて、「国会の議決」が必要であった点が挙げられる。経営の根幹は民意に敏感な政治に握られていた。「当事者意識」が芽生えるはずがない。 しかも、政治は我田引水ならぬ「我田引鉄」とばかりに、不採算が明確な地方でも鉄路整備を掲げた。借金で経営状況が悪化してもなお、国会の議決を得るため、やるべきことが明確であっても、職員の要員合理化や赤字路線の廃止、運賃値上げなど、経営に直結する課題は〝先送り〟され続けた。 一方、現場では、一部を除き多くの職員が日々、職務遂行に奮闘していた。だが、公共企業体という経営形態もあり、「国鉄は倒産しない」「最後は国が何とかしてくれる」という意識が強く、まさに〝ゆでガエル〟状態のまま、衰退し、崩壊していった。
こうした歴史を見るにつけ、私には、現代日本のさまざまな諸問題が、国鉄崩壊前夜の構図と酷似しているように思えてならない。やるべきことが明確であっても、問題が先送りされ続けるのはその最たる例だろう。国鉄もバブルもそうだが、問題の本質は、そうした不都合な現実から目をそらし、その「崩壊」に備えることができなかった点にあるのではないか。日本を国鉄の二の舞いにしてはならない。
日本の再生は日本人の手で平成の歴史から学ぶこと
昨今、激甚化する自然災害や経済の停滞などを前にして、日本の将来に対し、悲観論が根強い。だが、あきらめるのは早計だ。打開策は必ずある。 今、日本人に必要なことは、問題を正視し、それに至った原因、すなわち、平成の時代に起きたさまざまな「変化」や「出来事」をしっかりと検証すること、起こり得る将来に備えること、新しい時代の未来を描き出し、勇気を持って、一歩前に踏み出すことではないか。令和の日本の再生は日本人の手に委ねられている。大切な日本を守り、発展させることができるかどうか。国民一人ひとりの決意と行動が今、問われている。(編集長・大城慶吾)
写真で振り返る平成(後半)と令和
スマートフォンが生まれた平成時代。小誌編集部が撮影した写真で2009年からの15年間を振り返る。
大城慶吾