山形大、教育学部復活へ 20年ぶり、教員養成に注力
山形大が、約20年ぶりに教育学部を復活させる方針を固めたことが30日、関係者への取材で分かった。小学校などの教員不足と選考試験志願者数の減少が深刻化する状況を踏まえ、大学の教員養成機能の強化を図る。小学校か中学校の教員免許取得を目指す定員は120人程度になるとみられ、早ければ2026年度に再設置される見通し。 他大学との再編・統合協議を発端に05年、山形大の教育学部は現在の地域教育文化学部に改組された。同学部は児童教育(定員80人)と文化創生(同95人)の2コースで、教員免許取得が卒業要件となるのは児童教育コースのみ。関係者によると、新たな教育学部は、小学校か中学校の免許取得を卒業要件とする120人ほどの養成を検討している。同大秘書広報室は「詳細は(31日の)記者会見で説明する」としている。 高速交通網の進展と県境を越えた進学者の増加などを背景に、国は2000年代に入り、教員養成大学の再編を進めた。山大は宮城教育大、福島大との再編・統合協議を経て02年、教員の計画的な養成を断念。存続を求める県や山形市、教育関係者などの意向を受けて05年、教育学部を、教員養成機能を維持した地域教育文化学部に改組した。
背景に深刻な人手不足 【解説】全国の教育現場が、深刻な教員のなり手不足に直面している。本県の公立学校教員選考試験の志願者数は2020年度採用から千人を割り込み、特に小学校の志願倍率は1倍台で推移する。約20年ぶりの教育学部復活へとかじを切る山形大は、地域に根差した大学として本県の教育をより強固に支える道を選んだと言える。 少子化による人手不足で、教員採用も民間企業との競争環境にある。本県の公立学校教員選考試験は志願者数の減少傾向が続き、小学校は24年度採用の志願倍率が約1.3倍。県教育委員会は25年度採用の小学校教員選考試験で、大学3年次に1次試験の一部を受験できる「特別選考」を新設するなど、志願者確保に懸命だ。 教員確保は労働環境の改善も不可欠になる。中教審は今年8月、処遇改善や長時間労働解消など働き方改革を柱とする総合的な方策を文科相に答申した。同大地域教育文化学部児童教育コースの一部学生は県外に進路を求めるという。卒業後の定着を図る上で、教育全体の環境整備が重要だ。