あの『モンスト』や『あつ森』じゃない! ギリギリを攻める野田ゲーの“プロトタイプ”たち
マヂカルラブリー野田クリスタルの個人チャンネル「野田ゲー」をご存じだろうか。 「野田ゲー」といえば、累計15万本の売上を記録したNintendo Switchのあの大ヒットゲームのタイトルを思い浮かべる人も多いだろう。このチャンネルは、野田ゲーが発売される前からその制作過程やプレイ実況動画などを本人自ら行っている、いわば「プロトタイプ」なのだ。 【写真】野田クリスタルが制作した、若手芸人との恋愛シュミレーションゲーム『愛方探し ~あなたに決めた~』 まだパッケージ未収録のゲームも多く、セクシーな女性のストッキングをハサミで切り裂いていくアクションゲーム『モンスト(モンモンとするぜストッキング姉さん)』、さらば青春の光・森田哲矢がモルックを投げてファンを倒していく横スクロールアクション『あつ森(あつまってくるファンにモルックを投げつけるさらば森田)』、異常なスピードで走る車を操作するレーシングゲーム『まぁむりかー(マリカー)』、7人の中指を立てるソルジャーの7回目を当てる推理ゲーム『Final Fuck 7回(FF7)』など、タイトルからギリギリを攻めた、今後収録が叶わなそうな幻のゲームも観ることができる。 なかでも、おすすめのタイトルが2018年にアップされた『愛方探し ~あなたに決めた~』だ。吉本総合芸能学院、通称:NSCの新入生として入学した「ひかる」が、ニューヨーク・屋敷裕政、コットン・西村真二、西村ヒロチョ、デニス・松下宣夫、ランパンプス・小林良行といったイケメン芸人たちとの出会いを通して、公私を共にする真の「愛方」を探す恋愛シュミレーションゲームだ。ギャルゲー好きの野田クリスタルだからこそできる絶妙なテキストと、若手芸人の人生を追体験できるストーリー、そして衝撃のオチと、かなりのクオリティに仕上がっている。ぜひ、いつかSwitch版野田ゲーに収録してほしいと個人的に願っている。 そして、このチャンネルでは毎週火曜日に生配信を行っている。野田クリスタルが現在プレイしているゲームを実況をしているのだが、その腕前は流石の一言。ストリートファイター6を始め、忙しいスケジュールのどこに腕を磨く時間があるのかと心配になるほどやり込んでいるのが伝わってくる。 冒頭や合間に行われる雑談も見逃せない。テレビなどでは破天荒なイメージもある野田クリスタルだが、その思慮深さと好きなものに対する熱量は、たとえそのジャンルを知らなくても引き込まれてしまう魅力がある。特に自ら大ファンを公言する漫画『ONE PIECE』に関するトークは「ガチ考察者」と言うほかなく、自らの名字と作者の尾田栄一郎の名前をもじり「野田栄一郎」を自称しているほど。週刊少年ジャンプ本誌や単行本を何度も読み返し、コマ一つひとつの違和感を洗い出し紐解いていく姿は狂気すら感じてしまう。 また、昨年の12月に行われた野田クリスタル主催の『ストリートファイター6初心者すぎ大会!』は、当たり前を疑い続ける芸人・野田クリスタルだからこその企画だった。そのタイトル通り出場条件はただひとつ「ストリートファイターの初心者」であること。対戦中に「初心者ではない」と判定された場合、即『名誉ある失格』となってしまう特殊ルールのもと行われる。この「初心者」という言葉が肝で「ジャンプボタンがわからない」「ガードの仕方がわからない」「そもそも対戦画面まで辿り着けない」など、ストリートファイターどころかゲームに触れるのも初めてのレベルの選手だけが勝ち抜いていく。 プロゲーマーのハイタニ、格闘ゲーム実況解説者のハメコ。とともに4画面に表示された対戦画面をチェックしながら大会が進められるのだが、明らかに適当に押したボタンで攻撃が当たった時など「初心者すぎる」動きをしたプレイヤーには3人から「ボタン連打してます! だいぶ良いですね!」「小学生時代のウチの妹のプレイを思い出すなぁ」など称賛の言葉が贈られる一方、初心者を偽り大会に参加した者に対しては「あ、こいつやってるわ! 完全にやってるわ! 失格!」「あ! ガードした! これは上手すぎる失格です!」と容赦なく『名誉ある失格』が告げられてしまう。そうして残った「真の初心者」達による決勝戦は間違いなく格闘ゲーム史に残る伝説の一戦。「格闘ゲームの対戦は上手くあるべき」という固定観念を逆手に取った革命的な大会だった。 2024年内には、ゲーム自動生成システム「野田AI」を搭載した最新作『スーパー野田ゲーMAKER』の発売も控えるなど、次々と面白いコンテンツを作り続けている野田クリスタル。いつまでも光り続けてほしい。
かんそう