中部空港でビジネスジェット整備 丸紅と新明和、新会社設立
丸紅(8002)子会社の丸紅エアロスペースと新明和工業(7224)は2月6日、中部国際空港でビジネスジェット(BJ)の整備事業を開始すると発表した。両社で新会社「JAMS(ジャムス)」を月内に設立し、4月から事業を始める。BJ市場は訪日客やビジネス需要の高まりを受け成長が期待されており、新会社により既存・潜在需要の掘り起こしを狙う。 【画像】新会社JAMSでの整備対象機材ガルフストリームG650ER ◆G650ERからHondaJetまで 新会社は、丸紅エアロスペースのBJ分野での知見と新明和の機体製造・整備分野での経験を組み合わせ、機体整備や整備管理、技術支援を提供する。BJを保有する個人・法人や国内外の運航管理会社から整備を受託し、定期整備のほか、突発的な不具合が発生した場合の「AOG整備」にも対応する。 対象機材はガルフストリームG650ERなどの大型BJのほか、中型機のセスナ・サイテーションシリーズ、小型機の「HondaJet(ホンダジェット)」で、中部空港の格納庫で整備する。整備作業はJCAB(国土交通省航空局)かFAA(米国連邦航空局)のライセンスを保有する整備士が担う。 新会社は本社を東京・有楽町に置き、中部空港内に「中部事業所」を設ける。新会社には丸紅エアロスペースと新明和の2社が50%ずつ出資し、出資額は非公表。社長には丸紅出身の西川博貴氏が、副社長には新明和出身の藤本記永氏がそれぞれ就任する。 丸紅は機体の販売代理店のほか、部品販売や航空機・エンジンリース事業、グランドハンドリング(地上支援業務)事業、MRO(整備・修理・分解点検)事業などを展開。BJ分野では、日本航空(JAL/JL、9201)と共同でチャーター手配・運航管理を担う「JALビジネスアビエーション」を2019年に設立した。JAMSを通じ、丸紅は新たにBJ整備事業に参画することで、丸紅クループでのBJ関連機能を強化・拡充したい考え。 新明和は、防衛省海上自衛隊が運用するUS-2救難飛行艇を開発し、製造・修理をはじめとする防衛省向けの機体ビジネスを展開する。また民間機ではボーイング787型機の主翼構造の一部「桁(スパー)」や、777の翼胴フェアリングを製造するほか、ボーイングが開発中の次世代大型機777Xでも翼胴フェアリング(中・後部)の製造を担う。 ◆中部は格納庫設置、24時間運用可 丸紅エアロスペースと新明和工業は、新会社・JAMS設立の協定書への署名式を中部空港内で開催。丸紅エアロスペースの上瀧(こうたき)彰社長と新明和工業で航空機事業部長を務める田中克夫常務が調印した。 JCABによると、国内のBJ発着回数は2022年に1万7763回となり、コロナ前の2019年(1万7525回)を上回っている。このうち最も多いのは羽田空港で3228回。中部空港と県営名古屋空港(小牧)を合わせた「中部圏」は羽田に次ぐ実績で、1410回となった。 JAMSの西川社長はBJ整備の現状について、羽田空港は飛来数が多いもののBJ用の格納庫を設置できないこと、近隣の成田空港は24時間運用できないと説明。中部空港は格納庫の設置が可能なことや、24時間運用できる優位性があることから拠点とするとした。 藤本副社長によると、中部空港には整備士を5-6人常駐させ、必要に応じ新明和の整備士を4-5人程度派遣するという。現在は採用活動を強化しており、将来的には数十人規模を常駐させたいとした。 中部空港を運営する中部国際空港会社(CJIAC)の犬塚力社長によると、BJの発着回数は2023年夏ごろから大幅に増加し、今年度は過去最高となる見通しだという。犬塚社長は「BJの受け入れを積極的に進めていきたい。(新会社設立は)ありがたいお話だ」と謝意を示した。
Yusuke KOHASE