障害者向け施設の不正請求「背景に国や自治体の責任放棄」労組が制度改善を要請
「問題の背景に国や自治体の責任丸投げ」
より実態を知り行政への要請につなげるため、西田書記次長らは昨年11月から、職員や元職員、利用者家族らを対象にした投稿フォームを開設。 「寄せられた声の中には『何も指導がないまま現場の支援請求業務をやらされる』といった不正の実態を表すものや、利用者家族からの『今の施設は熱心に対応してくれるが、今後は行き場がなくなるのでは』と不安を訴えるものもありました。 障害のある人の支援を熱心に考えている施設であれば、このような問題はありえなかったと思います。 ですが、恵は1年間で30か所ずつ施設を建てる一方、職員の確保や育成に関しては、場当たり的な対応をとっていました。 にもかかわらず、恵では、国からの補助金を増やすため、知識の少ない職員では対応の難しい、重たい障害を持つ人をどんどん受け入れるなど利益を追求しており、結果として経済的虐待や不正請求にもつながったのではと考えられます。 このように、2005年の自立支援法の成立以降、国や自治体が「障害者ビジネス」を容認し、民間企業に福祉に関する責任を丸投げしてきたことも、今回の問題の背景にはあるのではないでしょうか」
愛知県以外でも施設運用に問題「30人以上の職員が離職」
会見では続けて、神奈川県で恵問題の対応にあたった、福祉保育労神奈川県本部の寺田典子氏が事例共有を行った。 「聞き取り調査をしたところ、利用者に対する暴言や、本来、障害福祉の現場では避けるべき、異性介護などが確認されました。 また、働いている職員についても、残業代の未払いや16時間の1人夜勤、なかには約1年半で30人以上が離職している施設もありました。 利用者はこのような環境の中でも、施設で毎日暮らしています。ですから今後も行政に対する働きかけなどを通じて、よりよい施設に変えていきたいと思います」
国に制度改善を要請も「積極的な対応は得られず」
この日、福祉保育労は厚労省に対する要請行動を実施。恵のGHが今後他の事業者に譲渡される際に、利用者や職員への不利益がないよう対応することや、監査の充実、障害福祉施設の指定基準見直しなど制度改善を求めた。 福祉保育労の清水俊朗副委員長は、厚労省側の受け止めについて「誠実に対応してくれたものの、現状制度の説明に終始していて、より踏み込んだ積極的な対応は得られなかった」と評価した。 会見の最後に、西田書記次長は自治体と恵の責任について、以下のように訴えた。 「本来福祉は公的なものであり、障害福祉施設への指定を行っている以上、自治体は責任を負うべきで、仮に責任を持てないのであれば、安易に指定するべきではありません。 また、恵も今回の問題について、組織的に問題に関与していたのだから、会見で説明し謝罪するなど、社会的な責任を果たしてほしい」
弁護士JP編集部