経営者・今村翔吾が「シェア型書店」をブームで終わらせないために
〈「河野の一族って、かなりエグイくらいもめてますね」今村翔吾と河野六郎通有にある共通点は、家族との軋轢〉 から続く 【写真】この記事の写真を見る(7枚) 「なぜ人は争わねばならないのか」――。 直木賞作家、今村翔吾待望の新作『 海を破る者 』が発売された。 鎌倉時代。元寇という国難に立ち向かった御家人、河野六郎通有(通称:六郎)は、その問いを読者に投げかける。 今回のインタビューでは、創作秘話はもちろん、「出版業界に変革を起こしたい」という今村翔吾さんの熱い想いを聞いた。(全3回の3回目/ 最初 から読む) ◆◆◆
ジェンガみたいで動けない出版業界
――今年4月、神保町にオープンしたシェア型書店「ほんまる」。作家業だけでなく、書店経営を始められたきっかけをお聞かせください。 そもそものスタートは2021年、11月に大阪府箕面市の「きのしたブックセンター」を引き継いだこと。それから佐賀の書店を去年の12月に、今年4月にシェア型書店を始めた感じです。 最初に書店の経営に踏み込んだのは、本当にひょんなこと。書店が売りに出てて、ここが無くなれば町に書店が消えるということで……。 僕は作家としてのベクトルと、書店経営、そういう出版業界の周辺を含め、トータルに、この業界に何か一つ変革を残して死んでいったろと思ってまして。そのトライ&エラーの一つとしてシェア型書店「ほんまる」が生まれたという経緯です。
――一般的な書店とシェア型書店の違いは? 一般的な書店は、町の書店の規模だと50年くらい前からやり方が変わってなくて、売り上げは下がってきているだけ。既存の構造じゃもたなくなっているんです。本当だったら色んなシステムの改変をしていかなくちゃアカンねんけど……。 言っていいかは分からないですが、出版社も取次も書店も組合も、図書館も流通も含めて、動かない。動かせないんです。ジェンガみたいになってて、動けない。出版社が譲歩すれば取次が泣く。取次がここをやったら出版社が怒るとか。ガチガチなんです。これを動かすのは僕が生きている間には無理かもしれない、って思ったんですよね。 じゃあ搦め手じゃないけど、システム自体を新たに外側に構築していくしか方法はない。焼け石に水になるかもしれないけど、当座はそれしか方法がなくて、そういう中でシェア型書店というやり方なら、新しい形の書店経営が成り立つんじゃないかっていう、「挑戦」をしている感じです。