「ミッチの取材は難しい」 名古屋グランパスを去る守護神ランゲラック、ナイスガイには記者泣かせの側面も
◇記者コラム「Free Talking」 名古屋グランパスのGKランゲラック(36)が、ついに退団する時を迎えてしまった。2018年の加入から守護神として君臨すること7年。超人的な反応に加え、人柄の素晴らしさでも知られ、愛称のミッチに引っかけ「神ッチ」とも呼ばれた。実は、「記者泣かせ」の側面もあった。 ◆ランゲラック、貴重なPKキックにスーパーセーブ!【写真】 それは、なぜシュートストップできたかの答えがほぼ毎回同じ、ということだ。ランゲラックのおかげで勝ち点をつかんだ試合は珍しくなかった。そうなれば、なぜビッグセーブをできたのか? という読者の疑問に答えるのは記者の務め。本人に尋ねるのだが「できるだけ近づいて、それから体を大きく見せた」や「自然に止めにいく。体が覚えているから」といった答えが多かった。 つまり、自分の中のセオリーに従って止めにいき、反応で防いだ、という結論になるのだが、なぜ、という疑問には、もう一声ほしい答えだ。同僚記者とも、ランゲラックの紳士でナイスガイな言動とは裏腹に「ミッチの取材は難しい」というのが、いわば定説となっていた。 ランゲラックの理論を垣間見たのは、退団直前のインタビューだった。「私は、引退後はGKコーチになりたい。なぜなら、GKという芸術を愛しているから。GKというのは1ミリ単位の精度が必要で、ゴールを守るということについて、何時間でも話せるよ」 試合後や練習後の取材時間は長くても10分間程度。膨大な自分のセオリーの中から、分かりやすく簡潔に説明してくれていたのだろう。同僚選手からは「機械のよう」と形容されることもあるほど、理論と動きが徹底されていた。 記者がグランパス担当となったのは在籍期間の後半にあたるが、楢崎正剛さんに続くグランパスの「背番号1伝説」の続編にわずかでも触れられたのは幸運だった。いつの日か再来日することを約束してくれたミッチ。その時は、その何時間でも話せる理論を聞き、あの数々のビッグセーブのすごみをあらためて感じてみたい。(サッカー担当・林修史)
中日スポーツ