自分貫いた楳図かずおさん、胃がんで療養中も創作意欲衰えず 赤白ボーダー柄に込めた意味とは
「漂流教室」「まことちゃん」などで知られる漫画家の楳図(うめず)かずおさん(本名一雄=かずお)が、10月28日に都内のホスピスで亡くなったことが5日、明らかになった。88歳。著作の管理や情報発信などを行う「UMEZZ」が、小学館を通じ発表した。葬儀は近親者のみで営まれたという。お別れの会については未定。胃がんを患って療養していたが、新作にも取り組んでいたという。 【写真】赤白ボーダー柄を着てない 若かりし頃の楳図かずおさん ◇ ◇ ◇ 楳図さんは、数々の漫画作品に加え、ユニークなキャラクターで人気者だった。赤と白のボーダー柄がトレードマークで、中指と小指を折り曲げる「グワシ」サインで知られた。 UMEZZはこの日「漫画家、芸術家の楳図かずおが、永眠いたしました。生前、楳図は自分の作品が世界中の人々に届いてほしい、永遠に読み継がれてほしいと願っていました。自分の作品の芸術的価値を信じておりました。その志がこれからも皆さまの心に留まり続けることを願っております」とのコメントを発表した。 晩年は胃がんを患い施設で療養中だったという。ただ、創作意欲が衰えることはなく、9月には新作アートを制作していることが発表された。同22日から金沢市で開催された「大美術展」で、新作の1点が公開されたばかりだった。 「へび少女」「おろち」などのホラー作品、荒廃した未来に小学生がタイムスリップするSF「漂流教室」は人間の心奥に迫った。幼稚園児が主人公のギャグ漫画「まことちゃん」からは、「グワシ」が広がり、多くのファンに愛された。 近年は、芸術家としての側面が強く、22年の「楳図かずお大美術展」では、27年ぶりの新作として101点の連作絵画を発表した。オープニングセレモニーにも登場し、熱く創作について語った。この4年前にフランスで開催された漫画の祭典アングレーム国際漫画祭で、代表作の1つ「わたしは真悟」が、永遠に残すべき作品に与えられる「遺産賞」を受賞したことが、意欲になったと話していた。 自伝的映画「マザー」(14年)では、監督、脚本を務めて多才ぶりを見せた。主演の片岡愛之助と出席したイベントで、前年秋ごろに転倒した影響で頭部に「血腫のようなもの」ができ、複数回手術したことを明かし周囲を驚かせた。 まことちゃんハウスと呼ばれた赤白ボーダー柄の自宅外壁をめぐる裁判でも話題になった。07年、近所の住民が外壁工事の差し止めを求め、完成後は撤去を求められた(その後、原告の請求棄却)。楳図さんは赤白ボーダーのネクタイで公判に出廷、「赤は元気、生きてる印。白は余白。ストライプはエネルギー」と説明し、自分を貫いた。 ◆楳図(うめず)かずお 本名・楳図一雄。1936年(昭11)9月3日、和歌山県生まれ。55年「森の兄妹」で漫画家デビュー。66年「ねこ目の少女」などで独特の世界観が注目され「恐怖漫画」のジャンルを確立。75年「漂流教室」で小学館漫画賞受賞。76年「まことちゃん」が爆発的にヒット。長年の執筆による腱鞘(けんしょう)炎が悪化したとして、95年の「14歳」を最後に執筆活動をしていなかった。