「中年・実家暮らし」に厳しい視線…子供部屋おじさんはなぜ揶揄されるのか
昭和と平成で変わった「実家暮らし」
今回話題になったXのポストのような「上がらない給料、円安、物価上昇といった厳しい経済状況下で家族同士が助け合って生きていく」ために、実家暮らしを選択することについて山田氏に見解を伺おう。 「地方から都心へ移り住む一人暮らしの割合が増えた高度経済成長期のころとは違って、現在の日本経済が低迷気味であることを考えると、“一人暮らし”というもの自体が贅沢なライフスタイルになりつつあるとも言えます。そこで昭和のころのように子供が稼いだお金をすべて親に渡し、家族みんなで財を分け合って協力し合うような生活であれば、実家暮らしを続けるのもアリでしょう。 ところが平成に入ったあたりから、親にお金を渡さない、あるいは月に数万円程度の少額しか渡さないで、実家暮らしを続ける独身者が増えたんです。私の調査によれば、実家暮らしの子が親に渡している平均額は月2~3万円で、一人暮らしの家賃などに比べたら格段に安い金額です。こうなると家族みんなで助け合っている状態とは言いがたいため、親の経済状況に子供が依存しているような実家暮らしは問題視されるべきでしょう」(以下「」内は、山田氏のコメント)
悠々自適な生活を送る
平成に入ってから実家暮らしを続ける独身者の“在り方”が変化したようだが、実家暮らしの独身者が「子供部屋おじさん」などと揶揄されるようになった背景とも関係しているとのこと。 「実家暮らしでも家にお金を入れない、あるいは少額しか家に入れず、給料はほぼ自分のために使って悠々自適な生活を送るという人々が増え始め、結果的にそれが『早く結婚したい』といった意欲や焦りから遠ざけ、晩婚化を招き社会問題となっています。現在の実家暮らしの割合は昔とさほど変化はないのですが、実家暮らしの未婚者の割合は増えているんです」
実家暮らし=裕福な暮らしというイメージ
前述したとおり、「パラサイト・シングル」という造語は山田氏が提唱したものだ。 「結婚適齢期を過ぎても親に基本的生活条件を依存して、豊かな生活を楽しむ人々を、私は『パラサイト・シングル』(寄生する独身者)と名付けました。この言葉を考案した1990年代ごろの実家暮らしの独身者たちは、正規雇用者が多く、自身が稼いだお金でブランド品や車など好きなものを買い漁っていたため、非難する声も出ていたんです。 一方現在は収入がなかなか上がらず、実家暮らしでもブランド品などには手を出せないかもしれませんが、根本的には1990年代のパラサイト・シングルと同じように、家にお金を入れずに自身の趣味などに浪費しているケースが多いです。近年はこのように実家暮らしで余裕のある暮らしを送る独身者が目立ってきたことで、『子供部屋オジサン』と呼ばれ、世間から冷たい視線を向けられるようになっていったのではないでしょうか」 実家暮らしの独身者が晩婚化を招いていること、そして「実家暮らし=裕福な暮らしができる」というイメージが定着し、それが親への“甘え”だと非難されるようになっていったことが、「子供部屋オジサン」などと揶揄される背景になっているようだ。 記事後編は「東京の『子供部屋おじさん』は裕福…地方とは大きく異なる『実家暮らし』の事情」から。
A4studio(編集プロダクション)