『アンメット』はなぜ“リアル”なのか――9話ラストの初挑戦、手術シーン誕生秘話をPが語る
■第9話ラストは最大の挑戦だった ――リアリティといえば、先週10日に放送された9話の、杉咲さんと若葉さんの長回しのラストシーンも、「ドキュメンタリーのようだった」と話題を呼んでいます。あのシーンはどのように生まれたのでしょうか。 あのシーンは、『アンメット』最大の挑戦だったのではないかと思います。もちろんほとんどの台詞は脚本に沿っていますが、「アリを見ていた」など三瓶の子ども時代の話は、二人の会話をより自然で感情豊かなものにするために、台詞ではなく、脚本の篠崎さんが作ったいくつかのエピソードや情報を若葉さんに預けて、本番のときの感情で選んで話してもらいました。もちろん初めての試みでしたが、お芝居がリアリティを帯びる大きな助けになったと思います。また、撮影は一発勝負の長回しで、役者二人もスタッフも、とてつもない緊張感の中にいました。プロデューサーとしては、全員が最高のシーンを撮るために集中しているリハーサルの光景にも、実際に撮れたシーンと同じくらいの感動を覚えました。
民放連ドラでは異例の機材や制作陣が集結
■配信作品にも負けない“生っぽい質感”の創出 ――9話ラストが「初めての試み」だったとのことですが、ほかにも、これまでもドラマをプロデュースしてきた米田さんが『アンメット』で初めて挑戦していることがあれば教えてください。 たくさんありますが、「ALEXA35」という、とてもいいカメラを使っていることもその一つです。本来、民放連ドラでなかなか使えるようなものではなく、映画でも最高峰レベルの機材で。「一番いい画を撮るために何ができるか」とスタッフィングとともに模索するなかで、Yuki Saito監督(ドラマ『おっさんずラブ』など)をはじめとするいろいろな方のつながりをたどって、Yohei Tateishiさん(映画『OUT』など)という映画畑で活躍されている撮影監督や、ALEXA 35というカメラにたどり着くことができて。 ――予算は大丈夫だったのでしょうか。 日々ハラハラしています(笑)。 ――(笑)。なかなかない色味や風合いになっていると素人の私でも感じるのですが、ALEXA 35を使うことで、どんな画が撮れるのでしょうか。 今回の作品においては、他のカメラでは撮れない、生っぽい質感が生まれて、『アンメット』の世界観を手助けしてくれています。カメラを活かす照明がないと宝の持ち腐れになってしまうのですが、照明部には、川邊隆之さん(映画『シン・ゴジラ』など)という方に来ていただけました。まさに体験したことのないスタッフの座組で、こんなすごい方々が、まさか民放連ドラの中でも、決して大規模な予算とは言えないカンテレのドラマに参加してくださるなんて、と。見たことのない画がたくさん撮れて、配信のウインドウに並んでも負けない作品になったと思います。 ――きょう17日には、10話が放送されます。見どころを教えてください。 ゲスト患者を迎えるのは10話が最後なのですが、脳腫瘍のなかで最も悪性の強いグリオブラストーマを患う、『アンメット』では初めて命に期限のある患者さんとミヤビが向き合っていきます。患者さんご夫婦の思いと、ミヤビの気持ちがリンクするエピソードになっているので、ミヤビの医者としてのあり方、三瓶との関係性に注目していただければと思います。
■カンテレ米田孝プロデューサー 2004年4月、カンテレ入社。事業部、制作部、営業部を経て、現在はコンテンツ統括本部 制作局 制作部 部次長を務める。代表作にドラマ『僕たちがやりました』(17)、『健康で文化的な最低限度の生活』(18)、『まだ結婚できない男』(19)、『竜の道 二つの顔の復讐者』(20)、『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』(20)、『エージェントファミリー ~我が家の特殊任務~』(21)、『恋なんて、本気でやってどうするの?』(22)など。
八木ひろか