HIRO10に会場熱狂 ブレイキン大能 感謝の涙「人生、面白え」
●戦い抜く姿勢、大胆な技連発 【パリ=田島大之】堂々たるダンスで満員の観衆を総立ちにさせた。10日に行われたパリ五輪・ブレイキン男子の1次リーグ。金沢市出身の大能寛飛(おおのひろと)選手(ダンサー名・HIRO10)は3戦全敗に終わったものの、最後まで戦い抜く姿勢とダイナミックな技の連続で会場を熱狂させた。「人生、面白え」。喝采を浴びた19歳は独特の表現で大舞台を振り返り、感謝の涙に暮れた。 【写真】ブレイキン男子1次リーグで演技する大能選手(手前、ダンサー名HIRO10)。奥は半井選手(ダンサー名SHIGEKIX) 大能選手が圧巻のステージを見せたのは、予選敗退が決まってから迎えた3戦目だった。得意の回転技「パワームーブ」を連発し、倒立して片腕の肘だけで回転する「ワンハンドエルボーエアー」も披露。世界でもわずかな選手しかできない大技で観客を沸かせた。 ●敗戦に観客から不満のブーイング 演技を終えると大の字になり、その場に倒れ込んだ大能選手。結果は0―2で相手の米国選手が勝利したが、会場の雰囲気を支配したのは間違いなく大能選手で、判定に納得がいかない観衆からは大ブーイングが起こった。 大能選手の目には涙が浮かんでいた。「自分のパワームーブで沸いて、すごい大きな声を上げてくれたのを聞いて泣けてきた」。1勝もできなかった悔しさでなく、感謝の気持ちからあふれた涙だった。 試合後、大能選手は「思ったのは『人生、面白え』ってこと。この言葉を使うと何でも乗り切れる」と語った。目標のメダルこそ逃したが、今回の経験を次の糧にしようとする、心の強さを感じさせる言葉だった。 ふるさと石川県に向けては「(能登半島地震の)被災地に元気を与えることができたと思う。自分的には満足」と笑顔。パリまで応援に来てくれた家族に感謝し、「家族を自分のブレイクダンスで海外に連れていく夢がかなった」と喜んだ。