マイナ保険証の利用者増で「20万円」を病院に支給!?「受診する側」にメリットはないの? 狙いと内容について解説
厚生労働省はマイナ保険証の利用促進のために、2024年5月~7月のマイナ保険証利用人数の増加量に応じ、診療所や薬局などに最大10万円(病院は20万円)を一時金として支給することを決定しました。 一見すると、病院などの医療機関のみが得をするだけのように見える政策です。マイナ保険証を利用することで、病院で診察を受ける患者側にメリットはないのでしょうか。政策の狙いと内容を見ていきましょう。 ▼タンス預金していた現金を銀行に預ける場合、「税金」の支払いは発生するの?
医療機関におけるDXの切り札としての「マイナ保険証」
2024年12月2日から、現行の健康保険証は発行されなくなり、マイナンバーカードによる本人確認などを行う「マイナ保険証」に統一されていきます。 厚生労働省は医療機関に関するデジタル化・効率化に力を入れており、今回の「マイナ保険証」利用者増加量に応じた一時金支給のほかにも、医療機関に医療事務のデジタル化をうながす制度改正が行われています。 例えば、診療報酬の改定によって「医療DX推進体制整備加算」という項目が設けられ、オンライン請求を行うなどの一定の体制を整えた医療機関には追加で診療報酬が払われるようになります。医療事務などのデジタル化を推進した病院への「ごほうび」が用意されたといえるでしょう。 わが国では、高齢化の進行による医療費・社会保険料の増加が近年の大きな問題となっていますが、「マイナ保険証」の活用をはじめとする医療業務のデジタル化により、事務量を減らそうというのが、基本的な政府の姿勢だと言えるでしょう。この流れは、高齢化のさらなる進展にともない、今後も加速していくと予想されます。
「マイナ保険証」を利用する患者側のメリットとは
それでは、マイナ保険証を利用する患者側にはメリットはないのでしょうか。 筆者としては、マイナ保険証の活用などで我が国全体の医療に関する事務量を大きく減らすことができるのであれば、国民全体に「薄く広く利益がある」だろうと考えています。 しかし、その利益とは「マイナ保険証をはじめとする医療のDX化によって、病院内部の事務負担が減った。また、病院での待ち時間が少し短くなった」というようなものなので、医療を受ける側の国民にとっては非常にわかりづらく、医療DX化による利益を実感しづらいメリットであるとも言えます。 厚生労働省は、マイナ保険証を利用することで患者側には以下のようなメリットがあるとPRしています。 ●紙の保険証を利用した時よりも、20円医療費が節約できる ●顔認証で、病院での受付が自動化される ●今までの医療歴から、正確なデータに基づく診療や薬の処方が受けられる ●窓口での、限度額以上の医療費一時支払いが不要になる ●マイナポータルからe-Taxに連携し、確定申告が簡単にできる 残念ながらいずれも、国民が実感しやすい大きなメリットとは言いづらいでしょう。