旭洋造船、捕鯨母船が竣工。共同船舶向け、日本で73年ぶり新造
旭洋造船(山口県下関市、越智勝彦社長)は3月29日、本社工場で建造していた捕鯨母船「関鯨丸」を捕鯨会社の「共同船舶」(東京都中央区)に引き渡した。日本で捕鯨母船が新造されるのは73年ぶり。下関や東京で関係者らに向けてお披露目を行った後、5月末に出漁する予定だ。 共同船舶の所英樹社長は「母船式捕鯨を未来永劫(えいごう)つなげていく取り組みが今日始まった。これからうまく運用して稼ぎ、マーケットをつくっていかないといけない。最終的には5500トン規模の消費マーケットを目指している」と述べた。 「関鯨丸」は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退と商業捕鯨の再開を踏まえ、設備の近代化と高性能化を図った捕鯨母船として計画された。船価は約75億円。総トン数は約9299総トンで、船体寸法は全長112・6メートル、幅21メートル。揚鯨能力はナガス鯨の捕獲解禁を見越し70トンを備える。 解剖甲板は労働環境と衛生環境を改善するため、屋内に設置した。保冷設備として20フィートサイズのリーファーコンテナを最大40個、800トン分積載可能で、このほか袋製品保冷庫(60トン)も置く。 推進システムは発電機とモーターを組み合わせた2基2軸の電気推進方式を採用。航続距離は南極海に到達可能な7000カイリとなっている。甲板上には探鯨用大型高性能ドローンのデッキを設置した。 旭洋造船の越智社長は「電気推進船自体が旭洋造船で初めて。さらにコンテナを40個積み、それをハンドリングする天井走行クレーンを付ける必要があった。そして、引退した『日新丸』で使用していた機器を短期間で移設しなければならなかった」と建造の苦労を振り返りつつ、「非常に難しい船だったが、なんとか納期通りに完成させることができた」とほっとした表情で話していた。
日本海事新聞社