「答える答えないは本人次第なのに…」大谷翔平“結婚会見”で露呈した「取材記者の“劣化”ぶり」
政倫審も、自民党女性議員の歌舞伎町不倫も吹き飛ばした大リーガー・大谷翔平の結婚発表&結婚会見。 「“妻”も義兄も鍵アカに…」大谷翔平インタビュー公開に“年齢・特徴”一致で「ネット大盛り上がり」 「自民党を助けるため」 という根も葉もない陰謀論も出ないほど、破壊的なタイミングですべてのニュースを吹き飛ばした。 大谷が吹き飛ばしたのは、他のニュースばかりではない。 優秀と思われる記者の劣化と、昭和感ありありの演出に頼らざるを得なかったテレビ番組の作り方だ。 まずは記者の劣化について。 「結婚というプライバシーに関することですから、本人が話したくなければそれまでですが、結婚会見に質問をぶつけたいわゆる番記者の連携の悪さ、質問の手ぬるさだけが後味として残りましたね」 そう語るのはスポーツ紙の元運動部デスクだ。 「メディアがコタツ記事を競って配信することばかりにうつつを抜かしている間に、記者の質問力が衰えたんじゃないでしょうか」 と、皮肉っぽく付け加える。 結婚会見の直後に放送されたTBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』の冒頭において、森本キャスターは 「聞いてほしいこと聞かない。どういう人なのか、仕事を持っている人なのか、どういう輪郭の人なのか、さっぱり分からない」 と不満たらたら。 「詳しくは(大谷選手も)話したくないんでしょうけど、(質問が)出てこないんですね、それで終わっちゃいました」 と、あまりにも淡泊な質問に苦言を呈した。 実際、粘り強さもなく、相手に嫌われたくない安全地帯から、相手に嫌がられない質問を山なりのボールで投げ入れたような感じ。前出のスポーツ紙・元運動部デスクが引き取り続ける。 「最初に質問で、入籍日と奥さんの人柄についての質問が出ました。それに対して、大谷が『普通の人です』と答えている。ここは“拾いどころ”なんです。『普通の人が、どこでどうやったら大谷さんと知り合いになれたのですか』と畳みかけることができた。それなのに、記者は『知り合ってどれくらい?』と自ら質問をそらし、大谷が『3、4年前くらいですかね』と貴重な情報を明かしてくれているにもかかわらず、一切バレなかった秘けつを聞きにいかない。 そればかりか次の質問で『FAの判断に影響はあったんですか』と、世間の関心とズレズレの質問につなげている。質問を考え、ある程度流れを想定しつつ臨むも、最終的には臨機応変に対応するのが記者会見です。相手の答えに何かかぶせるのか、相手の答えから何を引き出すのか。それができていなかった」 他にも「短いスパンで会った」と答えた大谷に、“場所はどこなのか”と追加質問しなかったり、およその年齢さえ(年上?年下?も含め)確認していない。取材のイロハが欠けている。 大谷が答えるかどうかは別問題で、記者は質問できる機会をもらっている。それを生かし切れていない。 実際、『Number』ウェブのインタビューでは、年齢を明らかにし、どんなデートをしていたかなどについて語っているわけだから、年齢に関する質問がNGだったわけではない。現場にいた記者の凡ミスだ。 テレビ番組の古臭い演出がやたら目についたのも、大谷の結婚ニュースが“暴いた”功績だった。 「インスタで大谷が発表した一報が情報としてはすべてでした。試合の場面は、契約上使えない。使えても金銭が発生する。そこでテレビ番組が使えた唯一の一手は、街録でした」(情報番組ディレクター) いわゆる、街の声を拾う、という昔からある手法だ。カメラマンとディレクターで街に飛び出し、道行く人に声をかけ、即席でインタビューするという、新しい知恵も工夫もない手法。前出の情報番組ディレクターが続ける。 「翌日の情報番組をざっと見ましたけど、久しぶりに街録だらけでしたね。しかも日本中の系列局が街録に出ていた。要するに、どこのディレクターも、その程度の発想が一般的だった、ということですよ。 中学時代、高校時代、日ハム時代の、試合以外の映像を持っている局は、そういった過去素材をこすりにこすっていましたけど、あとは、コメンテーターによる“おめでとうコメント”で濁すしかありませんでした」 映像がない限り、成立しないテレビという宿命。近年の情報番組が映像ではなく、やたらパネルを多用するのはそのためだ。 大谷の記者会見はニュース映像として何度も何度も流された。ただその内容はお粗末で、何度も何度も流されるたびに目を見張るものではなかった。 記者の“質問力の低下”がただただ露呈した会見だった――。 取材・文:ワタベワタル 夕刊紙文化部デスク、出版社編集部員、コピーライターなどを経てフリーランスのエンタメライターとして活動。取材対象は、映画、演劇、演芸、音楽など芸能全般。タレント本などのゴーストライターとして覆面執筆もしている
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