矢板中央の井上拓実主将が敗戦後、相手監督に伝えた“感謝”の意味「自分は大阪から覚悟を持ってきました」【選手権】
敗因は「一人ひとりのメンタル」
[高校選手権1回戦]矢板中央(栃木)0-1 東海大大阪仰星(大阪)/12月29日/等々力 【PHOTO】“選手権”から日本代表へ羽ばたいたヒーローたち! 当時の秘蔵ショットで振り返る! 「自分は大阪から覚悟を持ってきました。本当に栃木に来て良かったなと思います」 矢板中央のキャプテン井上拓実は試合後、そう口にした。 第102回選手権の1回戦で矢板中央は、東海大大阪仰星と等々力陸上競技場で対戦。0-1で敗戦を喫し、初戦敗退となった。 矢板中央は立ち上がりから押し込まれる展開となり、強みの堅守を見せて粘り強く守っていた。しかし、後半1分に一瞬の隙を突かれ、水永直太朗にネットを揺らされて失点。終盤にはセットプレーなどからチャンスを作るが、決め切れないまま、試合終了の笛が鳴った。 ダブルボランチの一角でフル出場した主将の井上が敗因に挙げたのは、選手一人ひとりの精神力だった。 「3年生がラストの試合だと思って最後、本気でやれたかというと、やっぱり甘かったと思いますし、そういうところが仰星のほうが上だったと感じます。 一人ひとりのメンタルが、試合を通してもそうですけど、試合以外のところが自分は9割だと思っています。そこでの隙とか甘さというのを全部、取り除けた時に、自分は初めて日本一になれると思うので、私生活は大事だったかなと。そこが自分としては一番痛いですね」 後悔の念を滲ませる井上は大阪府出身で、中学時代はガンバ大阪門真Jrユースに所属。東海大大阪仰星には、当時のチームメイトが多くおり、「抽選会が終わって大阪代表とやると決まった時から、自分はやる気しかなかった」と語る。 元チームメイトである東海大大阪仰星のGK森本真幸が「井上には負けられないと思っていた」と対戦を楽しみしていた事実が記者から伝えられると、井上は言葉を詰まらせながら、「自分もこの試合にかけていたんですけど、何もできなかったので、一番悔しいです」とかつての盟友の前で満足のいくプレーを見せられず、悔しさを露わにした。 試合後には、いち早く自チームのロッカールームを飛び出し、駆け足で東海大大阪仰星のロッカーに向かう井上の姿があった。 「仰星の中務(雅之)監督とは、高校進学する際に進学先として仰星も考えていたので、その時にいろんな話をさせてもらいました。それの感謝を伝えました。あと仰星のメンバーとも会話ができました。悔しいですが、1回戦敗退は自分の中ではすごく良かったです」 高校最後の公式戦。井上にとっては、ただの選手権1回戦ではなく、かけがえのない1試合となったようだ。 取材・文●手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)