『FF7 リバース』はリゾート地「コスタ・デル・ソル」がそれだけで2時間以上遊べるコンテンツに進化していて頭が完全にコンフュした。「間違いなくFF7なのに、全然知らないFF7の物語」が展開されてワクワクが止まらない
「本当に、とんでもないものを見せられてしまった…」 2月某日、『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、『FF7 リバース』)を2月29日の発売に先駆けてプレイさせてもらい、出てきた感想を一言で表すとこうなる。 『ファイナルファンタジーVII』画像・動画ギャラリー 1997年にプレイステーションで発売した名作『ファイナルファンタジーVII』(以下、『FF7』)。当時の筆者は中学生で、オリジナル版の『FF7』は毎日のように一緒に遊んでいた友人が遊んでいるのを傍で見ていただけではあったものの、『FF6』からの目を見張るようなグラフィックの進化や、ゴールドソーサーのバリエーション豊かなミニゲーム、チョコボの育成に頭を悩ませる様子、そしてラストバトルの「あの技」の迫力などは、今も味わい深い思い出だ。 筆者自身がオリジナル版の『FF7』を実際に遊ぶことになったのは、そこからかなりの時が流れ、実は昨年──2023年のことになる。 その年の頭に「FF7のストーリーをほぼ知らない人間がそのスピンオフ作品『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII- リユニオン』(以下、『CCFF7R』)を遊ぶとどうなるのか」という企画が立ち上がり、それを遊び終わった後で元のFF7にも興味を持った筆者は「遊ぶならこの機会しかない!」とばかりにPSゲームアーカイブスで配信されているオリジナル版『FF7』に手を出したのだ。(なお残念ながら、先の『CCFF7R』の企画は没になった) ただ2023年に遊んだオリジナル版『FF7』の体験は、発売からかなり時が経っていたのもあってか、正直に言うといろいろと複雑だった。もちろん当時の超人気作らしく今でも良い部分は沢山あるのだけれど、同時に想像していたよりも低い難易度や、ダンジョン内の歩ける場所のわかりにくさなど、今にしてみると気になる部分も多くあったのだ。 そして結局この時のプレイは、中盤の町・コスモキャニオンを訪れたところで手を止めてしまうことになった。何事にもタイミングがあるとはいうものの、実際なかなか難しいものだな、と感じさせられることになった。 さて今回は、そんな若干複雑な『FF7』プレイ歴もある中で、筆者としては初の『FF7』リメイクシリーズとなるリメイク第2作『FF7 リバース』のプレイレビューをお届けしていく。 本作は前作『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、『FF7 リメイク』)から続く、ミッドガル脱出後から「忘らるる都」までの展開が描かれるため、筆者のオリジナル版のゲームプレイ状況的と照らし合わせると、元の話の半分ほどは知っていて、残り半分はほぼ知らないという状態でプレイしたレビューとなっている。 今回は一度は手を止めてしまった『FF7』への再挑戦という形でもあったのだが、実際にプレイしてみると…気づけばプレイ時間は3日で50時間を超えていた。完全にエンディングまでぶっ続けだった。1日あたり約17時間やっていた計算になる。 あらためて言わせていただきたい。 「本当に、とんでもないものを見せられてしまった…」 文/司破ダンプ ■間違いなくFF7なのに、全然知らないFF7の物語 本作の特長をひとつに絞るのは難しい。あえて言うならば、それはベースにある『FF7』の物語をなぞりながらも、それを原作以上に掘り下げ、さらに新たに盛り付けられた高いクオリティのコンテンツの物量でプレイヤーを殴ってくる、想像をはるかに超えたゲームとしての豊かさだろう。 前作『FF7リメイク』もけっこうな大盛りの内容だったとのことだが、本作のボリュームは間違いなくそれをさらに超えた、超デカ盛りパフェのごとき様相を呈している。 たとえばストーリーは、本作は『FF7』の大筋の物語は維持しながらも、道中で起こるイベントの数々はほとんど別物と言っていいレベルで作り直しが行われている。全体としてのストーリーはおおむね見知った『FF7』のものではあるのだが、実際の話はほとんどまったく知らない脚本で進んでいくのだ。 この詳細について話すとどうにもネタバレになってしまうので、キャラクターの扱いについて書いてみよう。たとえば仲間の一人であるユフィは、オリジナル版では必ず仲間になるキャラクターではないため、ムービーシーンでは登場しなくなるなど、ストーリーの本筋と絡む展開ではやや不遇な印象があった。 しかし本作ではそんなユフィもストーリー上で仲間になるため見せ場が大幅増量されており、さらにはユフィ自身を操作してダンジョンを進むパートなども追加されている。これはもちろんほかの仲間も同様で、パーティーメンバー全員にそれぞれ新たな見せ場が用意されている。 また新たに登場する印象的なNPCや、思わぬところで登場する既存NPCとの絡みもあり、物語はオリジナル版にはないさらなる賑わいを見せている。プレイ中「お前…こんなところで!?」と何度なったことか。だがしかし、本作の物語の魅力はそれだけではない。 本作ではこれに加えて、オリジナル版ではまったく見覚えのない、新たな謎をはらんだ完全な新ストーリーも展開していくのだ。この新展開の描き方がまた秀逸なのである。 ネタバレになるため詳しく語ることは避けるが、これは本当に「やってくれたな!」という感じだった。 このまったく見たことのない『FF7』の物語がゲームの進行とともに徐々に語られていくために、オリジナル版の展開を知っている筆者も、あらたな謎を抱えた物語がどこへ落ちるのかを見届けたくなり、さらにさらに本作の物語に引き込まれていくこととなった。 つまり本作は、既存の物語の作り直しに加えて、新たな物語を交えた2重のリメイクという構造になっているのだ。個人的に、お気に入りのゲームのリメイクというのはストーリーを知っているがゆえに「別に今さら遊ばなくてもいいや」となることも多いのだが、本作はオリジナル版を遊んでいるプレイヤーならばこそより付加価値を感じることができ、同時に新鮮に楽しめるものに作り上げられている。 なお今回、筆者は本作の後半の展開についてはオリジナル版を未プレイの状態でプレイしたが、もちろんそちらも十分に楽しむことができた。ただ筆者の場合だと、やはり途中までとはいえオリジナル版を知ったうえで遊んでいたのもあり、どちらかといえば物語の新旧の比較をしながら遊んでいる時期のほうがより楽しく感じられたように思えた。 ・どのチャプターもハンパないコンテンツ量。どうしてコスタ・デル・ソルで2時間以上遊べるんだ…!? チャプターごとに訪れる、街などのコンテンツの盛り込み方もまたスゴいことになっている。たとえば本作では、ある時点でコスタ・デル・ソルというリゾート地を訪れることになるのだが、これはオリジナル版ではちょっとしたイベントとともに通り過ぎる程度の街で、滞在時間はせいぜい十数分程度という場所だった。 ところが本作では、作りなおされた街は観光地としての要素が多分に増強された、遊べる一大リゾートとしてしっかり作り込まれており、現地で展開するイベントやミニゲームなどを合わせると、コスタ・デル・ソルはここだけで2時間以上楽しめるコンテンツに進化している。なにを言っているのかわからないかもしれないが、本当の話だ。 コスタ・デル・ソルでこの様子なので、『FF7』のミニゲームの本拠地ともいえるテーマパーク・ゴールドソーサーなどは…それはもう。おおむね皆さんが想像される通りで間違いないと言っておこう。 いや本当はこちらについても語りたいのだが、実はこちらは今回のレビューでは写真をお出しできないことになっているため、ゴールドソーサーについては今回は「とにかく期待しておいてください!」とだけお伝えしておくことにする。 ■ついに登場したフィールドマップは想像の100倍広かった。広すぎる! そして本作では、前作『FF7リメイク』では出歩けなかった広大なフィールドマップもついに登場する。シナリオの進行に合わせて徐々に解放されていくフィールドでは、エリアごとに崖を登れる山チョコボや空を滑空できる空チョコボなどさまざまな特徴を持ったチョコボや、バギーといった乗り物が登場し、エリアを跨ぐたびにまた違った風景、また違った探索の楽しみをもたらしてくれるようになっている。 フィールドマップはセミオープンワールド的な作りで、各所にアイテムの隠された探索ポイントや、特殊なモンスターとの戦闘イベントなどが点在している。根っからのオープンワールドRPGとして作られているゲームと比べると、NPCとのサブクエストやちょっとしたダンジョンなどに次々と遭遇するようなレベルとまではいかないものの、歩き回っているだけで次々と新しいイベントポイントに遭遇し、思わず色々なところに立ち寄ってしまう作りなのは間違いない。 サブコンテンツ的な要素としてはあまりにも広く、「いやいや盛り過ぎだよ!」と逆に困ってしまうくらいのボリュームだ。 ちなみにこのフィールド探索は、やり込みだすと総プレイ時間は100時間をゆうに超えるものになるとのことだ。今回のレビューでは時間的な制約もあり、とても全部を見て回ることはできなかったが、チャレンジ精神に溢れる方はぜひコンプリートを目指して挑戦してみてもらいたい。 ■アクションになっているのに、昔ながらのFFの確かな匂いもする戦闘 バトルは『FF7リメイク』に引き続き、オリジナル版よりも直感的に操作できるアクション戦闘となっている。筆者は『FF7リメイク』はプレイしていなかったため、本作で初めてリメイク版のバトルシステムに触れることになったわけだが、いざ触ってみるとFF7のバトルをしっかりと踏襲したバトルシステムとなっており、思った以上に気に入ることとなった。 前作をプレイしていない方向けに説明すると、本作のバトルは、移動や攻撃、回避、防御といったアクションを自由に出せる一方で、オリジナル版に存在したATB(アクティブタイムバトル)の要素も残されており、アビリティ・魔法・アイテムといった行動は、通常攻撃や時間経過によって貯まるATBゲージを消費して行う形となっている。本作の戦闘はこのように、アクションであると同時にRPG的でもあるシステムとなっている。 このハイブリッドなバトルシステムは、確かに『FF7』の進化形の戦闘だという納得感と同時に、一本のタイトルとしての独自性も確保したものとなっていて、しっかりと新しいゲームを遊んでいるという満足感を感じられた。 正直なところ、実際のプレイ前に映像で見た際には、ほかのゲームですでに遊んだことのあるようなバトルシステムになっているのでは…? という不安もあったのだが、結果としてはまったくの杞憂だった。定期的に新たな仲間が加わることで新たな戦い方が体験できるようになるため飽きも来ず、ラストまで楽しく遊び続けることができた。 また本作のバトルでは前作『FF7リメイク』からの追加要素として仲間と協力して放つ連携アクション、連携アビリティが追加されており、これによりバトルは前作よりもさらなる広がりを見せている。 なかでも連携ゲージを貯めることで発動可能となる連携アビリティは、演出もリミット技並みにド派手で迫力満点だ。「…ッ…カッコイイ…」となる一方で、なかには結構コミカルなものも交じっており、雑に投げつけられるレッドXIII絡みの連携技などを見て「そんな連携攻撃アリ!?」となることもしばしばだった。 なお今回のレビューにあたっては難易度をノーマルに設定し、そこそこ駆け足気味にゲームを進めたのだが、バトルはつねに十分な歯ごたえがあったため、ずっと楽しく進めていくことができた。 オリジナル版の『FF7』をプレイした際には、とくにレベル上げをせずにいてもゲームを進められてしまう難易度の低さに少々気怠さを感じることもあったのだが、今回のゲームバランスは求めていたものに非常に近くなっており、理想的な難易度だと感じられた。 ■メニューから行える要素もパワーアップ。マテリアの付け替えも便利に……なってた! メニューからは本作から新たに登場したアイテムクラフトにアクセスできるようになっており、道中で集めた素材を使って新たなアイテムをクラフトできるようになっているほか、新たに武器のカスタマイズなども可能となっている。 アイテムクラフトに関して言うと、今回プレイした際にはやや駆け足気味だったのもあってか素材があまり潤わず、全体を通してみるとあまり使いこなせなかった感がある。 とくに需要の高かったポーション系の回復アイテムに関しては、何段階かあるポーションのうち一番欲しいものに限って需要のある時期に素材が手に入らず、ストーリー進行とともにエリアが移り、そのポーションが不要になってからようやく素材が手に入り出すということが繰り返し起きていたため、ややアンバランスな印象を受けた。もしかすると、もう少しフィールド探索をしてみるとよかったのかもしれない。 オリジナル版と比較してメニュー関連でとくに嬉しかったのは、「マテリアクイック」というメニューの追加だ。これは正確には前作『FF7リメイク』から登場していた要素なのだが、中身としては仲間の装備マテリアを一覧し、入れ替えなどを行えるメニューとなっている。 本作のシナリオでは、各キャラクターの出番が強化されているのもあって、道中では頻繁にパーティーメンバーの交替が起こるようになっている。 オリジナル版ではこういう時、毎回主力装備として使っているマテリアを外しては新しいメンバーに付け替え直して…という作業が必要で、正直かなり面倒だったのだが、本作ではその点にも幾分かの改善が行われており、嬉しい限りだった。 いや、まあ…実を言うと、筆者はラストバトル直前になるまでこのマテリアクイックのことを失念していて、パーティメンバーが変わるたびに装備画面でちまちまとマテリアを入れ替えていたんですけどね!これからプレイする皆さんには、ぜひマテリアクイックによる快適なマテリア入れ替えの旅をお楽しみいただきたいです。いやホントに。 ■過去に作られた物語を現代の表現で行う、その折り合いのつけ方 という感じでさまざまな部分がパワーアップしている本作だが、FF7という作品はそもそもは初代プレイステーションの時代に作られた作品なので、ゲーム内で展開するストーリーやイベントは、当時の流行や実現可能だった表現にあわせてコミカルだったりファンタジー的に作られていた部分も多くあった。 そしてそれを今回のようなリアルなグラフィックで描きなおしてしまうと、いささかシュールな絵面になってしまうのが避けられないポイントも、やはり全くないというわけではない。 とはいえ本作は、そういった部分も可能な限り脚本や演出の作り直しで整合性を取ろうとしていると見られ、シュールならざるをえないところなどは逆にとことんまでシュールさを突き詰めることで、多くの部分でなるほどなあ、と笑って許せるような上手い折り合いをつけてきていると感じられた。 とくに印象的だったのは、旅の途中で訪れるジュノンでのイベントだ。あの場所で起こるイベントはオリジナル版からして諸々コミカルな展開だったと思うのだが、本作ではここもかなり思い切った方向に舵を切ることで、状況を乗り切っているのが印象的だった。筆者がプレイ中にいろいろ浮かびかけた疑問は最終的に「それなら仕方がないな!」に改めさせられた。 こちらもあまり語るとネタバレになってしまいそうなので詳しく言及することは避けるが、そういったシーンをどう乗り切っているかを見るのもまた本作の面白い部分だと思うので、もし原作至上主義に陥っている方がいれば(というか『CCFF7R』の後に『FF7リメイク』でなくオリジナル版『FF7』に手を出した筆者もその一人だった)食わず嫌いをせずに本作の試みを確かめてもらえると幸いだと思っている。 新たに語られていく物語、圧倒的なクオリティで作り込まれたコンテンツとその物量。総じて『FF7 リバース』は、あらゆる要素が高いレベルにまとまっており、かつオリジナルのFF7を遊んだことのある者にとっても、そうでない者にとっても非常に満足度の高い作品になっているのは間違いないと感じられた。 なかでも注目は、やはり新たに作り上げられたストーリーだろう。その行方がどうなるかは、ぜひ皆さんのその目で確認していただきたい。本作の物語、そして世界を体験すれば、おそらく多くの人が筆者が冒頭に書いたように「本当に、とんでもないものを見せられてしまった…」となるのは間違いないと思っている。本作はまさにリバース、新生の『FF7』だ。 このリメイクを体験してしまったいま、私はこれからどうするべきなのだろう。原点となるオリジナル版の物語もあらためて確認してみたいし、『FF7 リメイク』もやはり遊ばなければならないだろう。そしてもちろん、今回のレビューでは拾い切れなかった本作の要素についても確認していかなければ。 オリジナル版の発売から27年の時が経って、まさかここまで『FF7』という作品に対する熱が上がるとは思ってもいなかった。もはや、途中下車はできそうにない。 本作をこれから体験する皆さんが、今回のレビューで本作に少しでも興味を抱き、そしてそのプレイ後に筆者と同じ気持ちを持ってもらえることになれば幸いだ。 『ファイナルファンタジーVII リバース』はPS5向けに、2024年2月29日に発売を予定している。
電ファミニコゲーマー:司破ダンプ
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