1月の羽田事故、運輸安全委が年内に経過報告「事実情報は出来る限り入れる」
国の運輸安全委員会(JTSB)の武田展雄委員長は12月17日、羽田空港で今年1月2日に起きた海上保安庁機と日本航空(JAL/JL、9201)機の衝突事故について、予定通り年内に経過報告(中間報告)を行う方針を示した。一方、事故原因などの分析には時間がかかるとして、事故調査報告書の公表時期については明言を避けた。 【写真】海保機との衝突で焼け落ちたJALのA350 武田委員長は、経過報告の内容について「事実情報は出来る限り入れる」として、コックピットボイスレコーダー(CVR、操縦室音声記録装置)や飛行記録装置(DFDR)などの記録についても、内容により経過報告に含まれる可能性を示唆した。 調査報告書の取りまとめに1年以上かかる場合、経過報告を出すことになっている。年内の経過報告後、調査報告書の取りまとめには時間がかかるとして、武田委員長は公表時期を「いつと言うことが言いがたい」と現状を説明しつつ、「社会的関心が強い事故なので、なるべく早い機会に分析し、社会に伝えるべきものがあれば、途中の段階でも提言なり、意見(の公表)はありうる」との考えを述べた。 事故は1月2日午後5時47分ごろ、海保機MA722(ボンバルディアDHC-8-Q300、登録記号JA722A)とJALのエアバスA350-900型機(札幌発羽田行きJL516便、JA13XJ)がC滑走路で衝突し炎上。海保機は乗員6人のうち機長を除く5人が亡くなった。JL516便は乗客367人(幼児8人含む)と乗員12人(パイロット3人、客室乗務員9人)の計379人が搭乗していたが、全員が3カ所の出口から緊急脱出した。 今回の衝突事故は、A350が初めて全損・全焼した事故であるとともに、CFRP(炭素繊維複合材)で胴体が作られた機体としても初の全損全焼事故となった。このため、今後の航空機の安全性を考える上で重要な事故調査となっており、2月の会見で武田委員長は、「衝突後火災に至った過程を明らかにし、今後いかに乗客をお守りするかという観点から、全世界的にも要望されていると思っている」と述べ、CFRP製の機体で起きた事故の特徴や、事故防止策の提言につながる調査を進める考えを示している。
Tadayuki YOSHIKAWA